JRA菊花賞(G1)売り上げ激減の大ピンチ!? 日本ダービー上位5頭全滅なら“史上空前”の低レベル間違いなし……グレード制導入後「初の事態」に直面も
「最も強い馬が勝つ」
皐月賞(G1)の「最も速い馬が勝つ」、日本ダービー(G1)の「最も運のある馬が勝つ」に対し、菊花賞(G1)は長らくそう呼ばれてきた。
しかし、スピード競馬が全盛となったこの十数年で長距離レースの価値は下落。春のクラシック2冠に比べ、3000mの長丁場で争われる菊花賞は好メンバーがそろわない年も少なくない。
そんななか、昨年はコントレイルの無敗三冠が懸かっていたため、空前の盛り上がりを見せた。売り上げは前年比130.4%の大幅増で、JRAもホクホク顔。今年もその流れに乗りたいところだったのだが……。
「今年はエフフォーリアがダービーをハナ差で逃し、菊花賞で無敗の三冠を狙いにいく必要性がなくなりました。8月には陣営が秋のローテーションを発表し、天皇賞・秋(G1)から有馬記念(G1)が既定路線。菊花賞で主役になるはずだった皐月賞馬の回避で、ダービー馬シャフリヤールの出否に注目が集まっています」(競馬誌ライター)
そのシャフリヤールの次走も流動的だ。不良馬場で行われたトライアルの神戸新聞杯(G2)で4着に敗れ、まだ陣営から次走に関する発表はない。菊花賞に向かう可能性も残してはいるが、適性距離と中3週というローテーションを鑑みれば、1週先の天皇賞・秋、もしくは11月のジャパンC(G1)も視野に入っているだろう。
仮にシャフリヤールが菊花賞を回避すれば、春のクラシック覇者2頭が不在となる。そこで菊花賞の本命候補に浮上するのが神戸新聞杯を差し切ったステラヴェローチェだ。
前哨戦は道悪を味方につけた部分が大きかったとはいえ、皐月賞とダービーでも3着に入っており、その実力は折り紙付き。しかし、ステラヴェローチェも菊花賞に向かうかは微妙だという。
「神戸新聞杯の快勝で菊花賞の有力候補に躍り出たステラヴェローチェですが、今週に入ってから菊花賞を回避し、ジャパンCに向かう可能性が浮上しています。まだ正式な発表はありませんが、道悪が得意とはいえ重い馬場を走り、中3週での長距離戦には陣営も不安があるのかもしれませんね」(同)
もし、ステラヴェローチェまで3冠の最終関門を回避することとなれば、今年のダービーで掲示板に載った5頭すべてが菊花賞で不在となる。1984年のグレード制導入後、こういう例は一度もない。
ただでさえ長距離レースは敬遠されがちな昨今の競馬界。今年は前哨戦が雨にたたられたうえに、京都競馬場が改修中のため、阪神での開催が決まっていることもメンバーがそろわない要因かもしれない。
3コーナーの坂越えが2度ある京都も3歳馬にはタフなコースだが、ゴール前の急坂を2度通過する阪神の3000mはそれ以上に消耗が激しくなることが予想されるからだ。
コロナ禍において、順調に売り上げを伸ばしているJRAだが、今年の菊花賞は昨年の反動もあって大きく売り上げを落としてしまうのか。メンバーが小粒でも、馬券的には面白いレースになりそうだが、果たして……。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。