JRAスプリンターズS(G1)「まさかの先行策」10番人気シヴァージ3着激走の吉田隼人に絶賛の嵐!「もう少しやれたかも」秋競馬の“主役”がさっそく存在感
3日、中山競馬場で開催された秋の短距離王決定戦スプリンターズS(G1)は、3番人気のピクシーナイトが2馬身差の完勝。14年ぶりの3歳馬勝利を挙げ、世代交代を高らかに宣言した。
2着に2番人気のレシステンシアが入線したこのレース。だが、三連単が3万8610円の中波乱となったのは、10番人気のシヴァージ(牡6歳、栗東・野中賢二厩舎)が3着に激走したからに他ならない。
シヴァージと言えば、昨年1月の淀短距離S(L)から今年1月のシルクロードS(G3)まで8戦連続で上がり3ハロン最速を記録するなど、短距離界でも屈指の末脚自慢として有名だ。
だがこの日、本馬と初コンビを組んだ吉田隼人騎手は大きな可能性を示した。
16頭立ての芝1200mレースで、シヴァージは1枠1番という難しい枠に入った。これまでの後方からの競馬を鑑みれば、やはり一度外に出す必要性が高いと思われていたからだ。
しかし、吉田隼騎手は課題のスタートを決めると、すぐ前を走っていたピクシーナイトの後ろに入る好位からの競馬を選択。最後の直線では勝ち馬の進路をなぞるようにして、2着レシステンシアをアタマ差まで追い詰めた。
「驚きましたね。ここ3戦、スタートで後手を踏んでいたシヴァージだけに、この日も難しいレースになると思っていたのですが、吉田隼騎手の『スタートも出てくれた』との言葉通り、まずまずの発馬でした。
特筆すべきは、そこから吉田隼騎手がしっかりと馬を出して行って、ピクシーナイトの直後に付けたことでしょう。結果論になりますが、例年よりもスローになりましたし、この時点で好走する可能性はかなり高かったと思います。仮に(ピクシーナイトの)福永祐一騎手が100点とするなら、120点の騎乗ではないでしょうか」(競馬記者)
この結果には、ネット上の競馬ファンも「ポジション取りが見事」「まさか先行するとは、(レースの)流れ見えてるな」「これは騎手のファインプレー」と吉田隼騎手の騎乗ぶりを称賛する声が続々……。
中には「吉田隼人だったのか!」「吉田隼って知ってたら買ってた……」と、吉田隼騎手に乗り替わっていたことに気付いていれば馬券を買っていたという“嘆きの声”もあったほどだ。
「実は、昨年から今回のスプリンターズS前までのG1レースを5回以上騎乗した騎手の中で、吉田隼騎手は複勝回収値が1位。C.ルメール騎手や川田将雅騎手といったリーディング上位を抑えて、2位の池添謙一騎手のおよそ倍となる223%という素晴らしい数値を叩き出しています。
今では桜花賞馬ソダシの主戦としてG1で上位を賑わすことも珍しくなくなりましたが、実は本馬と挑んだ昨年12月の阪神ジュベナイルフィリーズが約1年半ぶりのG1騎乗でした。
そこで見事優勝すると、今年はステラヴェローチェの皐月賞(6番人気)・日本ダービー(9番人気)の連続3着や、ヴィクトリアマイルで騎乗したランブリングアレーの10番人気2着も光りますね。今や、G1でも目が離せないジョッキーです」(同)
「昨晩の雨でもっと時計が掛かってくれたら、もう少しやれたかもしれない」
レース後、そう良馬場まで回復した天候に“恨み節”を述べながら、さらに貪欲な姿勢を見せた吉田隼騎手。再来週の秋華賞(G1)ではソダシ、菊花賞(G1)でもステラヴェローチェといった主役候補に騎乗することが濃厚な絶好調男が、秋G1の開幕戦でさっそく存在感を示した格好だ。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。