JRA武豊の「理想と現実」に漂う悲壮感!? “凱旋門賞を勝つのが夢”も迫り来るタイムリミット、初挑戦から27年「そろそろ勝たせて」
また勝てなかったか……。終わってみれば“例年通り”の惨敗だった凱旋門賞(G1)に、大きな溜息をついた日本のファンも少なくなかっただろう。
「日本競馬の悲願」といわれて久しい世界最高峰のレースだが、今年も日本馬にとって厳しい結果が待っていた。
出走したクロノジェネシスとディープボンドは、国内では「道悪の鬼」ともいえる存在。ある意味では、力を要するロンシャンのタフな馬場を克服するに相応しい“特殊部隊”ともいえただけに、得意なはずの重馬場で凡走してしまったのは、非常に残念だった。
そして、日本馬以上に淋しさを覚えたのは、「凱旋門賞を勝つのが夢」と公言している武豊騎手の現状かもしれない。
「来年も絶対に乗りたい。やめられない。いつか勝てるように頑張ります」
ジャパンに騎乗を予定していた昨年は、厩舎の飼料から禁止薬物が検出されるアクシデントに見舞われて無念の見学。今年はブルームとのコンビで参戦したものの、直線で失速して11着に敗れた。
レース後には「この場所にいつもいたいと改めて思った。やめられないですよね」と、凱旋門賞への熱い想いをコメントしてくれた。元JRA騎手の安藤勝己氏が、自身のTwitterで「ユタカちゃんは最高峰を楽しむ騎乗」と、武豊騎手の心情を推察するツイートで振り返った。
「来年も来て、そして勝ちたい」
そう語ったレジェンドにとって、もはやライフワークともいえる凱旋門賞の初騎乗は、3番人気のホワイトマズルで6着に敗れた1994年。現在、52歳の武豊騎手だが、当時はまだ25歳。若き天才として売り出し中の時期である。以降も騎乗のチャンスがあれば挑戦を繰り返し、今年が9度目の騎乗だった。
レース前には自身の公式サイトにて「子供の頃から憧れたレースもうそろそろ勝たせてほしいというのが本音です」と語っていることはまさに文字通り。凱旋門賞勝利という夢と真摯に向き合う情熱が伝わるものの、そこには悲壮感も漂っている。
その一方で、52歳という年齢的にも現役騎手としてのタイムリミットが近づきつつある現実からは目を背けることが出来ないこともまた事実である。近年の騎乗馬で勝ち負けを期待されるほど下馬評の高い馬に騎乗しておらず、どちらかというと優勝より参戦することにウェイトが大きくなってしまっている。
かつては毎年のようにリーディングトップを独走し、国内最強クラスの馬に騎乗していた武豊騎手も、近年はG1で勝利するのも珍しいといえる状況に近い。日本馬でディープインパクトのように勝てるチャンスのある馬に再び巡り合えるのかとなると、よほどの幸運に恵まれる必要がある。
日本馬でなくても勝てればいいという意味では、「武豊で凱旋門賞を勝つ」と公言しているキーファーズの松島正昭オーナーのような心強い援軍が現れたことは、非常に心強いとはいえ、残された時間はそう長くない。
「日本競馬の悲願」と「武豊の夢」どちらが先に叶うのか?
競馬ファンとしては同時達成が最高の結果であることに疑いはないが、もしかしたらこのまま「いずれも叶わないまま終わってしまうのではないか」という最悪のケースも脳裏をよぎった今年の凱旋門賞だった。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。