JRAオークス制覇もフジテレビが完全“脇役扱い”で物議、7年前の「樫の女王」初仔は“異色”の外国産馬!良血馬対決で成長示す2勝目
10日、東京競馬場で行われた7R・3歳以上1勝クラス(芝1800m)は、中団後方からレースを進めた5番人気ドンナセレーノ(牝3歳、栗東・安田翔伍厩舎)が、直線で最内を鋭く伸びて勝利。昇級2戦目で1勝クラスを突破した。
このレースの2着はダービー馬のレイデオロを全兄に持つアルマドラード。ドンナセレーノは、そんな良血馬を相手に最後は3馬身突き放す強い勝ち方を見せた。
昨秋のデビューから初勝利に6戦を要したドンナセレーノ。1勝クラスを勝ったばかりで、まだ注目度はそれほど高くないが、実はアルマドラードにも負けない血統背景の持ち主でもある。
父は国内外でG1を6勝したロードカナロア、母は2014年のオークス馬ヌーヴォレコルトという正真正銘のG1ウイナーを両親に持ち、デビュー当時はそれなりに話題になっていた。しかし、410kgほどの小柄な馬体もあって、調教で強い負荷をかけられなかったことも出世が遅れる一因となった。
そんなドンナセレーノの馬柱で見ると、「Lord Kanaloa」、「Nuovo Record」と英語表記のスポーツ紙もある。
実は、生粋の日本馬でありながら、ドンナセレーノはイギリスで生まれた外国産馬なのだ。これは、母ヌーヴォレコルトが同馬を受胎中に渡英し、現地で出産したためである。
「17年3月の金鯱賞(G2)を最後に引退したヌーヴォレコルトは、その春にロードカナロアを種付けしたあと、同年秋にイギリスに移動。翌18年に現地で初仔として生まれたのがドンナセレーノです。その後、同馬は日本に輸入され、外国産馬としてデビューしました。
母のヌーヴォレコルトはドンナセレーノを出産後の春にフランケルを種付けされ、翌19年に現2歳の妹が現地で生まれています。その妹もすでに日本に輸入され、キュルキュマと名付けられています」(競馬誌ライター)
初仔でやや小ぶりに出たドンナセレーノだが、3か月半ぶりの一戦は前走からプラス8kg。馬体もややふっくら見せ、直線で内をこじ開けたレースぶりからも成長しているのは間違いない。両親の血をしっかり受け継いでいれば、古馬になってからが非常に楽しみといえるだろう。
ご存じの通り、父ロードカナロアが本格化したのは古馬になってから。母のヌーヴォレコルトも3歳春にオークスを制したが、3歳秋以降も第一線で活躍を続けた。
結果的にヌーヴォレコルトにとって唯一のG1勝利が7年前のオークスとなったが、ファンの間では“いわくつき”のレースとして有名だ。
「あの年のオークスは、桜花賞馬のハープスターが断然人気を集めました。このときファンから批判を浴びたのがフジテレビの中継です。カメラワークから実況までまるでハープスターがオークスを勝つことが決まっているかのような内容でした。
特にひどかったのが最後の直線です。ハープスターが頻繁に大映しになり、中継を見ている人はレースの状況が全くわからず、実況も最後までハープスターの名前を連呼していましたからね。
直線半ばで先頭に立ち、そのまま押し切ったヌーヴォレコルトが直線で名前を呼ばれたのは1度だけでした。1頭に偏った中継には、ネット上のファンを中心に大きな議論になりました」(同)
ヌーヴォレコルトを完全に脇役扱いしたフジテレビにファンがあまりいい印象を持たなかったことは言うまでもない。あれから7年、異色の外国産馬として2勝目を挙げたオークス馬の初仔ドンナセレーノが、大舞台でその名前を連呼される日は訪れるか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。