JRA武豊不在なら33年ぶりの「珍事」、天皇賞・秋(G1)ワールドプレミア岩田康誠から一転「未定」で再登板の可能性は?
31日、東京競馬場で行われる天皇賞・秋(G1)。昨年、無敗の三冠馬に輝いたコントレイルや、マイル女王グランアレグリア、今年の皐月賞馬エフフォーリアが激突する。世代を超えた豪華メンバーの“三強対決”に注目が集まる。
ところが想定騎手をみると、武豊騎手の名前がない。自身デビュー2年目の1989年以来、天皇賞・秋に32年間続けて騎乗しているレジェンドが騎乗しないとなると淋しい限りである。
今年の天皇賞・春(G1)を優勝したワールドプレミアの主戦を任されていた武豊騎手だが、負傷の影響もあったのか本番は福永祐一騎手とのコンビで優勝した。結果的に間に合った武豊騎手がいるにもかかわらず、乗り替わりとなったことには、様々な憶測を呼んだ。
そして、秋の天皇賞でも想定は岩田康誠騎手となっており、コンビ復活はなさそうな雰囲気。同馬には前走は福永祐一騎手、前々走は石橋脩騎手が騎乗したものの、それまではデビューから9戦連続で武豊騎手が手綱を取り続けていただけに、驚いたファンもいたかもしれない。
しかし、一度は岩田康騎手だった想定が「未定」に変わっていたのは気になる。もしかして武豊騎手の再登板があるのだろうか。
ただ、天皇賞当日の武豊騎手は、裏開催の阪神競馬場で騎乗する可能性が高い。DMMバヌーシーの公式アカウントでも、すでにホープインザダークのデビュー戦が武豊騎手で予定と発表済み。最終的にどうなるのかは分からないが、あまり期待しない方がよさそうだ。
その一方、このまま同騎手が天皇賞・秋に騎乗しなければ、実に33年ぶりの珍事となり、これはある意味「事件」といえる。
春・秋を通じて、いつしか天皇賞の季節になると「平成の盾男」と呼ばれるようになった武豊騎手。秋にクローズアップすれば、初制覇は自身にとって同レース初騎乗となった1989年。スーパークリークでの勝利は、記念すべき第100回の天皇賞だった。
平成の30年間は天皇賞・秋の「皆勤」騎乗を果たしただけでなく、牝馬による制覇も97年のエアグルーヴ、2008年のウオッカで2回も達成。また99年にはスペシャルウィーク、2017年にはキタサンブラックで勝利して、同一年の天皇賞春・秋連覇を達成するなど、武豊騎手は「盾男」と呼ぶにふさわしい“唯一無二”の存在といえる。
勿論、これだけ騎乗を続けていれば、喜ばしいレースばかりを演じているわけではない。91年はメジロマックイーンで1位入線を果たしたものの、進路妨害で18着に降着。98年のサイレンススズカは、レース中の不慮の事故でゴールまでたどり着くことができなかった。
令和時代に突入しても、2019年はマカヒキ、20年はキセキで出走。天皇賞・秋と武豊騎手といえば、数々の名馬と共に、競馬ファンにとって忘れられない名シーンを演じている。
しかし仮に武豊騎手の連続騎乗が途切れても、決して悲観することはないだろう。
24日の阪神9Rで“前人未踏”のJRA通算4300勝を記録した同騎手は「あくまで一つの通過点ですので、これに満足することなく、勝ち星を積み重ねていきたいと重います」とコメント。“唯一無二”や“前人未踏”と評される数々の記録を達成してきたレジェンド騎手のたゆまぬ歩みは、これからも続くはずだ。
例えば春・秋を問わず、来年の天皇賞には何事もなかったように騎乗して、あっさりと勝利する……。周囲の心配をよそに、そんな大仕事をやってのけるのが武豊騎手であり、こうしたシーンは今まで何度も目にしてきた。
いずれにせよ、武豊騎手不在の天皇賞・秋はレアケースで、貴重なレースといえるかもしれない。果たして「盾男」不在の影響で、レースはどんな結末となるか。様々な予想を楽しみながら、天皇賞ウィークを過ごしたい。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。