JRA菊花賞(G1)C.ルメール「コース誤認」危機一髪で回避!? オーソクレース好走の陰に記者のナイスアシスト
24日、阪神競馬場で行われた菊花賞(G1)。先頭でゴールを駆け抜けたのは4番人気のタイトルホルダー。未知の3000mを逃げ切り、クラシック最後の1冠を手にした。
勝ち馬から離されること5馬身差の2着に追い込んだのは、3番人気のオーソクレース(牡3歳、美浦・久保田貴士厩舎)。タイトルホルダーの影を踏むことはできなかったが、「アタマ+ハナ」の大激戦となった3頭による2着争いを制した。
レース後、C.ルメール騎手は「よく頑張ってくれました。最後は良い戦いをしてくれました。勝ち馬が強すぎましたし、2着は良い結果です」と愛馬を労った。
オーソクレースの実力もさることながら、光ったのはルメール騎手の手綱さばきだろう。不利とされる大外18番枠から、スタートは今ひとつ。最初のコーナー通過地点では後方グループの外に位置していた。
その後も終始外々を回らされながらも折り合いに専念。鞍上が手を動かし徐々に進出を開始したのは、2周目の3コーナー過ぎだった。4コーナー手前では直後にいたステラヴェローチェが忍びより、手応えは相手が上回っているようにも映った。
最後の直線を向くと、ステラヴェローチェに外から被されそうになったオーソクレースだが、鞍上の必死のムチに応えると、ゴール前出グイッと伸び、なんとか2着を確保した。
見応え十分だった今年の菊花賞。その舞台となった阪神の芝3000mは、2度の坂越えがあり、内回りを1周半走る。他には阪神大賞典(G2)で使用されているだけで、このコースを乗りこなしているという騎手は武豊騎手くらいか。ルメール騎手も例外ではなく、このコースでの騎乗は今回が3度目だった(17年と21年の阪神大賞典)。
位置取りや仕掛けのタイミングなど乗り難しいとされるコースだが、ルメール騎手はレース4日前の水曜日まである勘違いをしていたようだ。
それは先週水曜日に行われた共同会見でのこと。取材したのはレース本番でも実況を担当したラジオNIKKEIの小塚歩アナウンサーだった。以下は質問が阪神・芝3000mのコースに及んだ際のものだ。
小塚アナ 「阪神のコースはどうですか?」
ルメール 「乗りやすいです」「外回りですか?」
小塚「内回りです」
ルメ「あっ、内回りか……。ずっと(2周とも)内回り?」
ルメール騎手の“お茶目”なコメントに周囲にいた他の記者からは笑いが漏れたが、どうやらルメール騎手は内回りか外回りかをはっきり把握していなかった、もしくは勘違いをしていたようだ。
その後、ルメール騎手は「内回りはあんまり好きじゃない」とさらに笑いを誘ったが、「スムーズな競馬が必要ですね。3~4コーナーから段々ポジションを上げないといけない」と直線が短い内回りコースへの対応策を口にしていた。
「京都開催の菊花賞は1周目、2周目ともに外回りを走ります。阪神で行われた今年の天皇賞・春(G1)は1周目が外回り、2周目が内回りという特殊な形態でした。
いずれのコースも使用機会は少ないので、ルメール騎手がこれを把握していなかったのも無理はありません。レース4日前でしたから、これから対策を練ろうというところだったのではないでしょうか」(競馬誌ライター)
当然どの騎手もレース前までに位置取りや展開などを何度もシミュレーションするはずだ。考えにくいが、もし仮にルメール騎手が外回りだと思い込んだまま数日たっていれば、レースに対する準備が遅れていた可能性もある。
もしかすると、水曜日の共同会見の時点で気づけたことがルメール騎手の一助になり、本番での好走につながったかもしれない。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。