JRA天皇賞・秋(G1)エフフォーリアVS最強古馬2頭が激突! タイトルホルダー「5馬身差」菊圧勝が意味するものとは!?
31日、東京競馬場では伝統の一戦・秋の天皇賞(G1)が開催される。現役生活の残り2戦を全力投球で挑むコントレイルはここが復帰初戦。来年2月の定年を前にラスト天皇賞となる藤沢和雄調教師の秘蔵っ子グランアレグリアは、春から今年の大目標がこのレースと明言しており、4月の大阪杯以来となる2頭の再戦が実現する。
そして、現役最強クラスの古馬相手にあえて挑戦を表明したのが3歳馬のエフフォーリア(牡3、美浦・鹿戸雄一厩舎)だ。
春二冠はダービーこそシャフリヤールの強襲に不覚を取り、ハナ差2着に敗れたが、皐月賞(G1)では2着タイトルホルダーに3馬身差の差をつける完勝。ダービーは“展開のアヤ”も影響したことを思えば、実績的に世代最強といえる存在である。
大方の予想では、秋は菊花賞(G1)に進むと考えられたが、陣営は意外にも古馬相手の天皇賞参戦を表明。同馬を管理する鹿戸師からは「オーナーと相談して、今の段階でタフな3000mより天皇賞・秋へと決めました」というコメントも出ているが、クラシック軽視にも映る選択には賛否が分かれることとなった。
距離不安を抱えていたひとつ上の先輩コントレイルが、無敗三冠を狙って挑戦した経緯を考慮すると、たとえハナ差だとしてもダービーの敗戦で三冠の夢が潰えたことは、少なからず影響しているだろう。
だが、残念な選択に見える一方で、結果的に菊花賞回避が吉と出た可能性も捨て切れない。
主戦である横山武史騎手は、エフフォーリアが回避した“お陰” でタイトルホルダーとのコンビ復活に成功。セントライト記念(G2)では、自身の判断ミスも響く惨敗も経験したとはいえ、本番では見事な逃げ切りを披露。2着に5馬身差の圧勝を飾っている。
初コンビとなった3月の弥生賞(G2)で勝利した際、陣営から皐月賞で継続騎乗のラブコールを受けながらもタイトルホルダーに騎乗が叶わなかったという経緯もあった。
お手馬のエフフォーリアが菊花賞に出走していたなら、タイトルホルダーとのコンビは実現しなかったはず。そういう意味では、横山武騎手にとっては最良の結果となったのかもしれない。
自身の好騎乗で勝利を導いた横山武騎手の手腕も大きかったが、タイトルホルダーによる5馬身差の圧勝は見逃せない。こればかりはタラレバになるため、あくまでどちらにも騎乗していた前提でもいい。春二冠で完勝しているとはいえ、秋に別馬のような強さを見せたライバルに勝てたかどうかは分からない。
1984年にグレード制が導入されて以降、菊花賞馬の最大着差は7馬身差だった94年ナリタブライアンを筆頭に、88年スーパークリーク、93年ビワハヤヒデ、2013年エピファネイアが5馬身差で続いているが、今年のタイトルホルダーもこれに加わった。
もし、これだけの強さを見せたライバルとの力関係が、依然として変わっていないようなら、最強クラスの古馬相手でもエフフォーリアの勝算は十分にある。最高の結果を残せたなら、陣営の選択は英断だったと称賛されるだろう。
3頭それぞれに絶対に負けられない戦いが待っている今週末。あとは、エフフォーリアに陣営の想像を上回る成長力があるかどうかにかかっている。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。