エリザベス女王杯(G1)前走大敗デゼルは「度外視」で問題なし!? 元JRA安藤勝己氏が指摘した負けても納得できるだけの十分な裏事情
コロナ禍もようやく落ち着きを見せ始め、全国の競馬場も徐々に活気を取り戻しつつある。そして今週のエリザベス女王杯を皮切りに秋のG1・8週連続開催がいよいよ始まろうとしている。
京都競馬場の改修工事により、今年も阪神競馬場で行われるエリザベス女王杯。出走予定馬の中では今年の大阪杯(G1)を優勝したレイパパレ、先月の秋華賞(G1)を制したアカイトリノムスメなどが人気になりそうだが、フランスのG1を2勝した名牝アヴニールセルタンを母に持つ良血馬デゼル(牝4歳、栗東・友道康夫厩舎)に注目したい。
デゼルは怪我などの影響でデビューは3歳の3月と遅く、また脚元に不安があって、オークス(G1)では2番人気に支持されたものの、11着に大敗した。
しかし、古馬となった今春に才能が開花。初音S(3勝クラス)を勝利して臨んだ、阪神牝馬S(G2)を制して重賞初制覇を遂げた。
名門友道厩舎所属の本馬は、当初から素質は高く見込まれており、デビュー勝ちの際には友道師から「自信を持ってみていました、これは走りますね」と強気なコメントも出ていたほどだった。
連勝の勢いを買われて4番人気に支持された今春のヴィクトリアマイル(G1)では8着に敗れたものの、勝ち馬のグランアレグリアは別格としても、2着馬からは0.2秒差で着順ほど大きな負けではなかった。陣営も「基本的には2000m以上はあった方が良い」と評したように、距離不足の懸念もあったなら許容範囲だろう。
とはいえ、前走の府中牝馬S(G2)では16着と大敗。さすがにこの敗戦では本番は厳しいかと思いきや、元JRA騎手の安藤勝己氏は自身の公式Twitterで「デゼルは久々動かない」「状態に自信がないから位置を取って粘ろうとしたんやと思うよ」と、休み明けで状態が不十分であったために普段とは違う戦法をとった事が大敗に繋がったのではとの見解を示した。
それまでの後方待機策ではなく、初めて積極的に好位につける競馬を試したことも響いたのかもしれない。元々休み明けは走らないタイプで、叩き2走目で状態は上向いていると考えていいだろう。前走から距離延長となる点も、デゼルにとってはプラスに働きそうだ。
また、今回は昨年のローズS(G2)以来となる武豊騎手とのコンビが復活することも魅力。デビュー戦を勝利した時の鞍上で、なによりエリザベス女王杯最多勝利を誇るレジェンドとのコンビ復活は頼もしい限り。騎手の腕が問われる阪神芝内回りとなる今回、デゼルにとってはG1制覇の絶好のチャンスと言えそうだ。
今回、本命候補の1頭と目されるレイパパレはキャリア8戦6勝と素晴らしい成績も、芝2200mに限っては2戦2敗ともうひとつ。2000mまで6連勝していたライバルが1ハロン長いようなら付け入る隙はありそうだ。
1週間前のファンタジーS(G3)で今年3つ目の重賞勝ちを収め、勢いに乗る鞍上を背に、未完の大器が初のG1制覇に挑む。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。