JRAマイルCS(G1)グランアレグリア「ルメール酷評」中2週をなぜ繰り返すのか。集大成の完敗と「15連勝」香港マイル界の絶対王者の存在
21日に阪神競馬場で行われるマイルCS(G1)は、非常に見どころのあるレースになりそうだ。
当初、春のマイル王ダノンキングリーが出走を見送ったことで、若き3歳マイル王シュネルマイスターの独壇場になると思われた。しかし、ここに電撃参戦を表明したのが、G1・5勝を誇る女王グランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)だ。
前走の天皇賞・秋(G1)では皐月賞馬エフフォーリア、昨年の三冠馬コントレイルと3強を形成したグランアレグリア。マイル女王の2000m挑戦は3着完敗に終わったものの、歴史的な名勝負は多くのファンの胸を打った。
今秋の大目標……いや、キャリアの集大成とさえ位置付けられていた一戦で敗れてしまったグランアレグリア。その去就も含め、傷心の女王の「今後」が注目されていたが、陣営が選択したのは連覇の懸かった秋のマイル王決定戦だった。
無論、選択肢の1つに挙がって然るべきマイルCS挑戦。だが、一部の関係者の間では早くも不安説が飛び交っているようだ。
「5歳秋でキャリア14戦と、元々しっかりと間隔を取って大事に使われてきた馬。中2週の競馬は今春のヴィクトリアマイル(G1)→安田記念(G1)で初めて経験しましたが、最後はダノンキングリーに足をすくわれました。
レースの結果こそ、上がり最速の2着と女王の貫禄は示しましたが、主戦のC.ルメール騎手からは『手応えが前回(ヴィクトリアマイル)と全く違った』『呼吸的にも苦しそうだった』『直線の反応も普段より遅かった』と散々なもの……。明らかに中2週の影響が出たのではないかと推測されていただけに、今回陣営が再び中2週を選択したのは少し意外でしたね」(競馬記者)
今年6月の安田記念では2着に敗れたものの、上がり3ハロン32.9秒の鬼脚を見せたグランアレグリア。勝ったダノンキングリーとは、わずかアタマ差だっただけに負けてなお強しという印象だった。
しかし当時、半馬身+クビ差の4着馬だったインディチャンプは、3月の高松宮記念(G1)から十分な間隔を取った昨年の安田記念で約3馬身ぶっちぎった馬。そう考えると記者の言葉通り、やはり中2週が影響したのかもしれない。
また、今回のグランアレグリアには別の不安要素もあるようだ。
「実は天皇賞・秋の敗戦の後、右前脚の蹄に痛みが出たとのことです。現在は処置を行って問題ないとのことですが、それだけに中2週のマイルCS参戦には驚きました。
グランアレグリアには、すでに登録を行っていた12月の香港(香港マイルor香港C)という選択肢もあったはず。時間が最大の良薬とも言われる蹄に不安が出た以上、年内に使っても香港が濃厚だと思っていたのですが……」(別の記者)
なお、グランアレグリア陣営はマイルCS挑戦と同時に、香港へは遠征しないことも発表している。一部の報道では「蹄の状態と歩様のケアを考慮して国内に専念する」とのことだが、では何故中2週でレースに使うのかが、そもそもの疑問だろう。
「グランアレグリアは香港Cと香港マイルに登録していましたが、2000mの天皇賞・秋で完敗を喫した以上、仮に遠征したとすればマイル一択だったでしょう。
しかし実は今、香港のマイル界には15連勝中のゴールデンシックスティという絶対王者が君臨しています。
昨年の香港マイルでも日本のアドマイヤマーズらをまったく寄せ付けずに完勝。今年も地元の期待を背負った大本命馬になるでしょうし、仮にグランアレグリアが出走していたとしても、大きな壁になったことは間違いないでしょうね。陣営のマイルCS選択は、香港のマイル王との激突を避けたようにも見えます」(同)
『スポーツ報知』に取材に「香港は(アクシデントがあった)爪のチェックとかが厳しいから」と、マイルCS挑戦の意図を語った藤沢和調教師。果たして、中2週強行軍の“本音”はどこにあるのかーー。女王グランアレグリアの最終章が、いよいよ幕を開けようとしている。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。