JRA武豊「状態が整っていない」ロンが阪神JF回避も、ノーダメージの舞台裏に適材適所カルテットの存在
10日、キーファーズのHPに記載された発表によると、8月函館のデビュー勝ちから9月に野路菊S(OP)で無傷の2連勝を決めていたロン(牝2、栗東・石橋守厩舎)が、次走に予定していた阪神JF(G1)を回避することが分かった。
同馬は主戦を任されている武豊騎手の評価も高く、デビュー勝ちの際には「将来的にも楽しめる馬」と自身の公式サイトの日記でも取り上げていた逸材。2戦目でも牡馬相手に4馬身の差をつけて圧勝していただけに、その動向には大きな注目が集まっていた。
しかし、管理する石橋師のコメントによると、4日に放牧から栗東トレセンに帰厩したものの、「心身ともに状態が整っていない」と判断された結果、再度放牧に出すことを決定したとのこと。
ここまで2戦の内容が強かったこともあり、出走すれば上位人気に推されることがほぼ確実だった馬の回避は残念だが、回避の背景には武豊騎手のお手馬事情も少なからず影響しているかもしれない。
「単刀直入に言ってしまえば、ウォーターナビレラに手応えを感じているのは確かでしょうね。こちらはすでに阪神JF出走を表明しており、おそらく武豊騎手はこの馬に騎乗すると思われます。ファンタジーS(G3)は好位から抜け出す横綱相撲で勝利しました。
吉田隼人騎手とのコンビで2連勝していた馬ですが、管理するのは弟である武幸四郎調教師。マイルという距離適性的にもロンより、こちらの方がチャンスがありそう。ロン同様、縁のあるオーナーの所有馬ですから、融通も利きやすいのではないでしょうか」(競馬記者)
事実、ファンタジーS勝利後に武豊騎手は「父も天上で祝杯をあげたことでしょう」というタイトルで公式サイトの日記を更新。弟が手掛けた馬に騎乗して初めて重賞を勝ったということで、「母親が喜んでいるでしょう」と綴っていた。
また、ウォーターナビレラの山岡オーナーとは、「先代からの長いお付き合いで、父である武邦彦厩舎はもちろん、ボクの師匠である武田作十郎厩舎からという歴史の深さ」と説明していることからも、並々ならぬ関係性が伝わってくる。
勿論、ロンを所有するキーファーズにしても武豊の大ファンだけに、援護射撃に余念はないだろう。芝2000m戦を連勝したロンはオークス向きともいえ、マイルG1の舞台ならウォーターナビレラが適材適所といえそうだ。
そして「今年は2歳世代に楽しみな馬が揃った」という武豊騎手の言葉通り、将来的にG1制覇を意識できる期待馬が集まったのも、今年苦戦が続く武豊騎手が反撃の狼煙を上げるには頼もしい存在である。
なにしろロンやウォーターナビレラ以外にも朝日杯FS(G1)を狙えるドーブネ、ホープフルS(G1)が視野に入るトゥデイイズザデイなど有力馬が待機しているのだから、武豊騎手としては笑いが止まらないといったところだろうか。
牡牝で短距離から中距離まで大きいところを狙えそうな武豊カルテット。この最強布陣なら来年の競馬界を席巻しても決して不思議ではないはずだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。