「G1・58連敗」社台RHの砦ソウルスターリング全妹が、C.ルメールを背に待望のメイクデビュー! 怪物フランケル産駒の衝撃をもう一度
14日、阪神競馬場ではエリザベス女王杯(G1)が行われる。秋の最強牝馬を決定する大一番に渾身の4頭出しで臨むのは、社台系一口馬主クラブの社台レースホース(以下、社台RH)だ。
11日には枠順が発表され、内から順に5番ステラリア、6番ランブリングアレー、7番シャムロックヒル、そして12番デゼルと、いずれもまずまずの枠に収まった。
しかし4頭はあくまでも伏兵扱い。「勝つまでは難しい」というのが大方の見方だろう。
社台RHのG1レースにおける苦戦は今に始まったことではない。JRAのG1制覇は4年半も前まで遡らなければいけない。
それが2017年5月、東京競馬場で行われたオークス(G1)だ。桜花賞(G1)3着からの巻き返しを期すソウルスターリングが、C.ルメール騎手を背に1番人気に応えた一戦である。それ以降、社台RHはのべ58頭をG1に送り込んできたが、勝利がないまま今に至る。
かつては長きにわたって黄金時代を築いた社台RH。1983年から2004年まで、なんと22年連続で馬主リーディングに輝き、大舞台でその勝負服を見ない方が珍しいほどだった。しかし、2000年頃からノーザンファーム系の一口クラブ、サンデーレーシングが台頭。その後もキャロットファーム、シルクレーシングが頭角を現し、ここ数年はノーザン系3クラブに次ぐリーディング4位が定位置となっている。
反撃の狼煙を上げるためには、G1級の能力を秘めた素質馬の登場は絶対だろう。そんな社台RHの救世主になり得る1頭が14日、阪神の2歳新馬戦(芝1600m)でデビューを果たす。
その馬の名前はスタニングスター(牝2歳、栗東・友道康夫厩舎)。父はフランケル、母はスタセリタ。つまり、社台RH最後のG1馬、ソウルスターリングの全妹ということになる。
スタセリタがフランケルとの仔を宿した状態でイギリスから輸入され、14年春に社台ファームで誕生したソウルスターリング。怪物フランケルの初年度産駒として、デビュー前から大きな話題を振りまいた。
母スタセリタはその後、3年連続でディープインパクトと交配され、2頭が国内でデビュー。シェーングランツはアルテミスSを勝利したが、その後は期待されたほどの活躍はできず、繁殖入り。もう1頭のスパングルドスターは現役で、現在2勝クラスを走っている。
そしてディープインパクト3頭目の仔を宿した状態でスタセリタは17年秋に渡英。翌春にはフランケルと5年ぶりに交配し、19年春に現地で生まれたのがスタニングスターである。
つまり、ソウルスターリングの活躍を受け、わざわざフランケルと交配させるためにイギリスに渡り、誕生した社台期待の星ということだ。
スタニングスターが社台RHで募集された際のうたい文句は「ソウルスターリングが募集馬にラインアップされた時の衝撃を、再び皆様に感じていただけると確信します」というもの。この世代では2番目の総額7000万円という高値で募集がかけられた。
姉と同じく育成も順調で、今年4月に早くも栗東に入厩。ゲート試験にもすぐ合格するなど順風満帆にデビューに突き進んでいた。しかし、夏に放牧先で一頓挫あり、そこからは焦らず、10月上旬に栗東に再入厩。ようやくデビューへとこぎ着けた。
再入厩後はなかなか動きが良化せず、不安な面ものぞかせていたが、ここに来て態勢は整った。最終追い切りは、姉の主戦も務めたルメール騎手を背に、栗東芝コースで好タイムをマークして僚馬と併入。友道調教師も「フォームがいいし、テンションの面もそれほど気にならない」「ルメール騎手が、こちらが思っているより、好感触を持ってくれている」とかなりの手応えを感じている様子だ。
果たして怪物フランケルの仔は社台RHの救世主となれるのか……。まずは日曜日にその走りをしっかり見届けたい。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。