JRA「馬よりも人が心配」高田潤、松岡正海の勝利にファンは大喜び、大怪我から復帰した人気者に祝福の嵐
先週の日曜福島は、くも膜下出血から復帰早々に勝利を飾った高田潤騎手に祝福の拍手喝采が沸き起こった。同騎手はJ・G1タイトルを含む障害重賞19勝を挙げる障害の名手だが、9月20日の中山1Rを制した後に病院へ搬送。本人から後に「急に頭が割れそうな激痛が走り、そのまま病院へ搬送されました」と説明された。
検査の結果、くも膜下出血だったことが分かり、そのまま入院。ファンからも容態を心配するメッセージが数多く寄せられた高田騎手。その後の検査では、脳などに問題がなかったため、「頭痛はなくなり、もう大丈夫です」と復帰にゴーサイン。10月下旬に調教での騎乗を再開し、実践で復帰初戦となったのが14日の福島5Rだった。
コンビを組んだのは5番人気ジンエゴイスト(セ6、栗東・辻野泰之厩舎)。10頭立ての障害2750mで最後方の追走からマクる競馬で差し切り勝ち。平地競走からの転向初戦で最高の結果を残した。
「正直、初めての障害だったので次に繋がる競馬を意識して乗りましたが、3、4コーナーで仕掛けたらグンと反応してくれました。さすがはラヴズオンリーユーの兄弟」
レース後にそう振り返ったように、これには高田騎手も良血馬の底力を絶賛。
続けて「馬より人間の方が心配でしたし、実際に本当にしんどかったですが、馬に助けられました。勝つ事はジョッキーでないとなかなか味わえないですし、やっぱりいい仕事をさせてもらっていると思いました」と感慨深い様子。それと同時に「皆さんも是非脳ドックを受けてください」と、定期的な検診を呼び掛けた。
そして嬉しい勝利を飾ったのは松岡正海騎手も同様だ。落馬負傷により戦列を離れていたが、今月6日に約11カ月ぶりとなる実戦への復帰。福島10Rの福島2歳S(OP)をウインマーベル(牡2、美浦・深山雅史厩舎)で勝利した。
外枠からスッと好位を取ると早め先頭から押し切ると、観客席からは温かい拍手が起こった。ゴール前は大歓声でお客さんからも「おめでとう」や「お帰り」という温かい声援声が飛んでいた。
本人は「厩舎の方がここまでうまく育ててくれた。人間が病み上がりだから、こういう馬じゃないと勝てないよ!ホントいい時に乗せてもらいました」と陣営に感謝の気持ちを伝えていたのも松岡騎手らしい一面だろう。
その一方で「攻め馬の段階から勝つならここかなと思っていた。聞きにきた人や近しい人には言ってたけどね」と強気の松岡節も忘れてなかった。
とある記者は、「松岡騎手なんかは前に復帰した時とは歩様が違います。前は足を引きずっていて、周囲からもあんな状態で馬に乗れるのかなんて不安視されていましたが、今は普通に歩いていますし、感覚が戻って来れば更に活躍してくれる事でしょう」と期待していた。
SNSで発信力のある高田騎手、華のある松岡騎手が戻ってきて、これからの秋冬競馬を盛り上げてくれそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。