JRA「何でこんな騎手で出走しているんだ!」弁解する調教師の心労が軽減!? 期待馬に突然「障害騎手や若手騎手」が起用されていた裏事情

撮影:Ruriko.I

 先日、JRAから3勝クラスに関する出走馬決定方法の変更が発表された。

 その内容とは競走内容の充実及び、より計画的な出走が可能となるよう、2勝クラス競走等と同様の出走馬決定方法を導入するというものだ。なお、成績優先馬については、「4節以内の前走3着以内馬」として実施されるとのこと。

 この度の制度変更は、以前から現場で改善を求める声が上がっていた案件だったこともあり、評価している関係者も多かったようだ。これにより、エージェントなども権利取りなどで実績のない騎手を押さえたり、ややこしい投票をしなくて済むと言っている。

 なぜなら変更前の制度では除外などの権利持ちが優先的に出走でき、残りの5枠は完全な抽選となっていたからだ。登録すれば多少なりとも滑り込める可能性があったため、出走する意思のある馬が多い時などは、まず権利を取らないと出られなかった。こういった事情があって、権利取り目的で障害騎手や若手騎手などで投票していた背景にある。

「皆さんも見た事や疑問に思った事があるでしょうが、どうして今まで騎乗した事のない障害騎手で出走しているのだろう、何で減量が利かない特別なのにわざわざ若手で投票しているのだろうと……。

これは権利がない事でリーディング上位の騎手が確保できず、使う意思はほぼないに等しいながら、とりあえず権利目的で投票したら入ってしまったパターンなんです」(某TM)

 しかし、制度変更によって、特別登録が出た時点である程度条件に照らし合わせて他馬の状況を把握できるようになったことで、出走できるかどうかの判断が可能になる。

 これにより、想定が出た段階で難しそうな馬に騎乗予定の騎手は、確実に入る馬に鞍替えする事ができるのだ。

 これまでは特に短距離路線で出走したくても出られないケースもあった。3勝クラスになると馬の適性もほぼ固まってくるため、加えて上級クラスの番組はレース数が少なく、1度除外になると次のレースまで2、3週開くことも多々……。また、逆も然りで権利を取る目的で仕上がり途上や連闘で投票して入ってしまうパターンもあるなど非常に調整が難しい状況だった。

 それが、今回の変更により、リフレッシュなどで休んでいた馬は節が多いのでまず使えるようになり、使って権利を取れなかった馬はすぐには使えないということで予定を組みやすくなったらしい。

「馬主に権利を取れなかったので1度放牧に出して、違う馬を入厩させましょうと言いやすくなりました。以前は連闘でも何でもいいから投票してくれ、なんて言われたりしましたし、投票した後には『何でこんな騎手で出走しているんだ!』なんて言われた事もありました。

その都度3勝クラスの制度の説明をして、権利を取るために仕方なく投票したら入ってしまいましたなど、理解を得るために必死に弁解することもあり大変でした。そんな報告をしなくて済むようになっただけでも随分と気持ちが楽になります」(中堅調教師)

 今回の制度改善は現場サイドで好評だっただけに、次のターゲットは新馬戦になるかもしれない。

 特に年末から新馬戦が終わる2月くらいまでは毎年出馬ラッシュが予想される次期でもある。こちらについては全馬が初出走になるので制度自体の変更は難しいが、施行条件を変更することで緩和されるのではないかと期待する声もある。

 現在は番組がダートと芝の長めの距離に偏っている関係で、芝の短距離からマイルくらいの条件が極めて少なく、そこに多くの馬が集中する傾向が強い。にもかかわらず、芝の2000m戦などは逆にフルゲート割れになったりとバランスの悪さを指摘されてもいる。

 例えば次の中山開催で芝1200mの新馬戦は開催でわずか1鞍しかない。寒い時期は芝の保護を目的にダートの番組が増えるとはいえ、現在の馬場管理技術をもってすれば少しくらい芝のレースを増やしても問題ないのではという声も出ていた。

 すぐにという訳にはいかないかもしれないが、今回の制度変更のように、JRAが現場の要望を受け入れて改善に着手した姿勢は評価されていいのではないか。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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