JRA「大人気」岩田望来は何故、大舞台で勝てないのか。父・岩田康誠とは対照的な優等生スタイルが原因!?
今年の競馬も残すところあとわずかとなった。JRA各賞の争いも大詰めといったところだが、騎手部門ではC.ルメール騎手が5年連続リーディングをほぼ手中に収めており、相変わらずの実力を発揮している。
そんなルメール1強が続くジョッキー界だが、今年は新たなスター誕生を予感させる、若手騎手の台頭が目立った1年でもあった。
関東では横山武史騎手を筆頭に、兄の横山和生騎手、菅原明良騎手などがキャリアハイの活躍を見せている。
一方、関西では岩田望来騎手が2週を残しキャリアハイの86勝を挙げ、全国リーディング6位と強力上位陣に割って入っている。また騎乗数では、鉄人・幸英明騎手や松山弘平騎手を上回る数字で、現時点で全騎手中トップを記録していることにも注目したい。
中でも特筆すべきは、騎乗数が非常に多いにもかかわらず、勝率、連対率、複勝率もデビューから年々上昇している事だろう。
デビュー当初から、父の岩田康誠騎手がJRAのトップジョッキーである事や、名門・藤原英昭厩舎に所属していることなど、環境に恵まれている面はあることは否定できない。だが、それだけで食べていけるほど甘い世界ではない。21歳の若さでこの成績を挙げた事は、紛れもなく本人の努力の賜物だろう。
しかし、順風満帆に見える岩田望騎手のキャリアだが、唯一といっていい泣き所となっているのが、重賞を85戦して未勝利という不名誉な記録だろう。
競馬学校の同期の中でも、勝ち星では頭ひとつ抜け出ているが、重賞勝利に関しては同期の半分以上が初勝利を挙げる中、後れを取っている。それどころか、今年7月には後輩の泉谷楓真騎手にも先を越されてしまった。
今年の岩田望騎手の騎乗ぶりを振り返ると、平場では思い切りの良い先行策や、若手らしからぬ冷静なレース運びで、馬の能力を信じて測ったような差し切り勝ちを収める場面も多く見られていた。
しかし、こと重賞になると道中は無難な位置に収まり、最後の直線になって急に慌ただしく追い込んだり、また焦りからか早仕掛けで最後に交わされるような場面が増える印象を受ける。
実際にアンドラステで臨んだ10月の府中牝馬S(G2)では、逃げる16番人気の馬を4コーナーから早めに捕まえに行って、最後は後ろから来たシャドウディーバにクビ差交わされてしまうという結果……。5番人気で2着だったが、わずかのところで勝利を逃してしまった。
一方、父の岩田康騎手は園田在籍時からJRAのG1を制し、ピーク時には年間20勝近くの重賞を勝利し、つい先日の中日新聞杯(G3)でJRA重賞・通算100勝を達成。もちろん当時と現在を単純に比較はできないが、岩田康騎手には今の岩田望騎手とは真逆とも言える、大舞台でこその勝負強さと、いい意味での太々しさがあったように思う。
当時からその荒々しい騎乗スタイルやターフ外での立ち振る舞いから、ヤンチャなイメージもあり、どこか優等生感のある岩田望騎手の騎乗ぶりとは対照的だ。
今週も、土曜のターコイズS(G3)に先述したアンドラステで出走予定となっている岩田望騎手。上位人気になることが予想され、前走の借りを返す絶好のチャンスでもある。飛躍を遂げた若武者が、悲願の重賞初制覇を達成できるのか。勝ち負けと共に、その騎乗ぶりにも注目したい。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。