JRA「牝馬は勝てない」グランアレグリアが散った“壁”に挑戦者現る!? 朝日杯FS(G1)の定説を覆す41年ぶりVへ、セリフォス超え「超ド級」の紅一点

「牝馬は勝てない」

 一昔前から朝日杯FS(G1)には、そういった定説がある。それもそのはず、今から41年前の1980年に勝利したテンモン以来、牝馬での勝ち馬は皆無。1991年に前週に行われる阪神JF(G1、当時・阪神3歳S)が牝馬限定戦となってから、多くの牝馬はそちらへ向かうのが一般的という理由もある。

 それでも、ここまで何頭かの牝馬が果敢に挑戦してきたが、幾度となく牡馬の壁に跳ね返されてきた。3年前には、後にG1を6勝する女傑グランアレグリアも挑戦したが3着と敗れた。2歳のデビュー間もない牝馬にとって、一線級の牡馬達を相手に勝利するのは、相当な高い壁となっている。

和田竜二騎手

 しかし、今年は3年前のグランアレグリア以来、牝馬ながらに挑む馬がいる。スプリットザシー(牝2、栗東・西村真幸厩舎)だ。今回は新馬戦で手綱を取った川田将雅騎手に代わり、和田竜二騎手との新タッグで臨む。

 先週の阪神JF を結果的に除外となってしまった同馬だが、実はその登録段階から翌週の朝日杯FSもダブル登録していた。初めから2段構えのつもりだったのだ。

 今週に入り18日(土)に中山競馬場で行われるひいらぎ賞に加え、19日(日)に阪神競馬場で行われる朝日杯FSのダブル登録をしていた同馬だが、最終的に朝日杯FSを選択してきた。これにはSNS上で驚きの声もあったが、陣営の期待がそれだけ大きいとも言える。

 期待が大きいのもそのはず、前走の新馬戦の内容が秀逸だった。

 10月の新馬戦は朝日杯FSと同舞台の阪神の芝1600m。スタートを五分に決めると、道中は中団に位置し折り合いに専念。最後の直線で鞍上の川田騎手がGOサインを送ると徐々に加速していき、前の馬を捕らえ後続も振り切った。勝ち時計の1分34秒7は、11月に行われた同舞台のデイリー杯2歳S(G2)の勝ち時計1分35秒1を上回るものだった。

 開催時期による馬場のコンディションなどの違いはあるが、デイリー杯2歳Sの勝ち馬であり、今回の朝日杯FSでも上位人気確実なセリフォスを上回る勝ち時計を新馬戦でマークしたのだから、素質を感じずにはいられない。今回2戦目の上積みを考えれば、さらにパフォーマンスを上げてくる可能性もある。

 新馬勝ちからの直行で朝日杯FSに挑むことは一見無謀とも思えるが、6年前の2015年に勝利したリオンディーズも同じ新馬勝ちからの直行だった。未知な部分は大きいが、実力があれば勝ち切ることも可能だ。

 直前の追い切りでは、栗東坂路で4ハロン54秒2-12秒4を単走でマーク。先週の段階で仕上がっていたため、今週は調整する程度。それでもスムーズな動きに陣営は『サンスポ』の取材に「小柄だが、バネと躍動感が素晴らしい」と絶賛している。本番へ向け、準備は整った。

 新馬戦は392キロと小柄な馬体ながら、豪快な差し切り勝ちをみせたスプリットザシー。ここで結果を残せば“小さなアイドルホース”として人気のメロディーレーンに続く、新たなヒロインが誕生することになるかもしれない。

 来週の有馬記念(G1)に出走を予定している先輩にバトンを繋ぐべく、その華奢な体とは裏腹な豪快な走りを期待したい。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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