JRAタイトルホルダーの8枠16番は本当に絶望的なのか。知る人ぞ知る「参考レース」で8枠3年連続勝利中の事実と、過去10年3着以内「5%」データの抜け穴

タイトルホルダー 撮影:Ruriko.I

「僕は嫌いじゃない。いい枠だと思います」

 痛恨の16番枠……。横山和生騎手の強気な言葉も、強がりにしか聞こえなかったファンも多いのではないだろうか。コロナ禍への配慮により“無観客”で行われた有馬記念(G1)の公開枠順抽選会だったが、まるで全国の競馬ファンからのため息が聞こえてくるようだった。

 それもそのはず。スタートして間もなく1コーナーが待っている中山2500mの有馬記念は、外枠が不利なレースとして有名だ。

 実際に過去10年で8枠から馬券になった馬は、2018年のシュヴァルグラン(3着)のみ。3着以内率はわずか5%に留まり、菊花賞馬タイトルホルダー(牡3歳、美浦・栗田徹厩舎)が引いてしまった16番に至っては馬券になった馬すらいない。

 そんなデータを受けて、人気も急落……。クロノジェネシスとエフフォーリアの二強に割って入る筆頭候補とみられていたタイトルホルダーだが、前日の最終オッズでは前走の菊花賞(G1)でちぎり捨てたはずのステラヴェローチェにほぼ並ばれている。

「前走の菊花賞を逃げ切ったように、前から競馬したいタイトルホルダーにとって8枠16番の大外は、より痛いと言わざるを得ません。最初のコーナーまでの距離が短いコースですし、集団の前につけようとするにはスタートから相当な加速が強いられそうです。

横山和騎手も栗田調教師も気丈に受け入れている様子でしたが、できれば内枠が欲しかったというのが本音でしょうね」(競馬記者)

 ただ、本当に8枠は絶望的な“死の枠”なのだろうか。ある記者は「決してそんなことはない」と反論する。

「たしかに有馬記念の8枠の結果が芳しくないことは事実ですが、冷静に過去5年間の8枠の馬を振り返ってみると、すべて6番人気以下ですし、二ケタ人気の大穴馬も目立ちます。これだけ人気薄だと、枠に関係なく単純に力が足りなかったという可能性もあるのではないでしょうか。

というのも、実はグッドラックハンデ(2勝クラス)では、ここ3年で8枠が3連勝するなど大活躍しているんですよ」(別の記者)

 グッドラックHは、有馬記念当日に同じ中山芝2500mで行われるレース。このレースを見て有馬記念を予想するファンも少なくない、知る人ぞ知る“参考レース”といえるだろう。

 実はこのグッドラックHは、記者が話す通り8枠の馬が3年連続で勝利している。

 それも昨年と2018年は16番と15番が勝利。多頭数でも結果が出ていることは、タイトルホルダーにとっても心強いデータに違いない。他にも2017年に3着、2015年に2着、2014年に1着と8枠の馬たちが“常識”を覆す活躍を見せている。

「あとタイトルホルダーの父ドゥラメンテが、中山芝の中長距離で非常に高い適性を示しています。

まだ今年の2歳、3歳と2世代しかいないドゥラメンテ産駒ですが、今年の中山・芝1800m以上ではすでに10勝。これは同条件(2世代が対象)の全種牡馬の中でトップの成績で、50頭が出走して勝率はなんと20%、複勝率に至っては40%と驚異的な成績を残しています。

枠順が出る前から本命視していたことは事実ですが、馬の出来も良いですし、大外枠の不利を跳ね返せるだけの下地は揃っていると思いますね」(同)

「みんな落胆してるようだけど、イメージはそんなに悪くない」と栗田調教師が話すのも、馬が充実しているからこそ。3番手タイトルホルダーの“不運”により、クロノジェネシスとエフフォーリアの一騎打ちとみられている今年の有馬記念。

 だが、逆に菊花賞馬が勝てば一気に現役最強論の機運も高まるに違いない。

(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。

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