東京大賞典(G1)地方屈指の「天才」がオメガパフューム斬り! 衰え気になる王者に真っ向勝負を仕掛けられる十分な根拠
29日、中央地方通じて今年最後のG1・東京大賞典(G1)が大井競馬場で行われる。
有馬記念(G1)、ホープフルS(G1)で馬券を外してしまった人にとっては今年最後の挽回のビッグチャンス。そして全ての競馬ファンにとっても今年最後の一大イベントである。
出走馬の顔ぶれを見てみると、勝てば史上初となる東京大賞典4連覇となるオメガパフューム(牡6歳、栗東・安田翔伍厩舎)が断然の人気を集めそう。
同馬は現在、東京大賞典3連覇中であり、テーオーケインズやチュウワウィザードなどの強豪馬不在のここでは実績上位。史上初の4連覇を達成し来春の種牡馬入りに華を添えたい所だろう。
しかし、そんなオメガパフュームも今年で6歳とベテランの域に達しつつある。今年に入って得意の地方競馬場で3戦するも、いまだ未勝利。1月の川崎記念(G1)では地方船橋所属のカジノフォンテンに0.6秒差をつけられる完敗を喫した。
続く帝王賞(G1)では、大得意の大井で初の馬券圏外となる5着に敗れている。この帝王賞のレース後に、騎乗したM.デムーロ騎手は「スタートで進んで行かず、3・4コーナーでズブくなりました。でもいつもの事ですし、それでも長く良い脚を使える馬ですから大丈夫だと思ったのですが…」と、順調に勝ち星を積み重ねていた昨年までとは馬の反応が違ったとコメントをしている。
さらに、先月3日に金沢で行われたJBCクラシック(G1)でも、東京大賞典に出走するミューチャリー(牡5歳、船橋・矢野義幸厩舎)に敗れており、年齢的な衰えが少し気になる。
そうなると、人気必至のオメガパフュームよりも狙ってみたいのは、地方所属馬として史上初めてJBCクラシックを制したミューチャリーだ。先述した今年の帝王賞とJBCクラシックで2度オメガパフュームに先着したならチャンスは大いにある。
船橋競馬に所属の同馬は2歳時から将来を期待されており、これまで交流重賞にも果敢に挑戦し続けていた。
そして今春以降ついに本格化し、今年の帝王賞では強力中央勢に交じって4着と大健闘。その相手は大井で圧倒的な強さを誇るオメガパフューム、ダートG1・3勝のチュウワウィザード、後のBCディスタフ(G1)の勝ち馬マルシュロレーヌなど錚々たるメンバーに先着している。
続く先月のJBCクラシックではついに悲願の交流G1を制覇。そのレース内容も、奇策ではなく好位から押し切る横綱相撲で、中央馬にポテンシャルの高さを見せつけた。
さらに、ミューチャリーにとって追い風となりそうなのが、直近の2戦は、今年のJBC競走の開催地である金沢所属の吉原寛人騎手に託されたが、今回は主戦の御神本訓史騎手に戻っての一戦となる点だ。
御神本騎手といえば南関競馬で活躍し、天才との呼び声も高い名手だ。ブルドッグボスでJBCスプリント(G1)、C.スミヨン騎手の代打を任され、疾病による手術明けのケイティブレイブで浦和記念(G2)を制するなど交流重賞での実績も豊富である。また昨年は年間勝率が20%を超えるなど、地方競馬所属の騎手の中でも屈指の実力者として知られている。
地方からJRAに移籍した内田博幸騎手、岩田康誠騎手、戸崎圭太騎手などにも勝るとも劣らない実力の持ち主として、地方競馬ファンからも高く評価されており、大きなレースで勝負強さを発揮する点もプラスに働きそうだ。
今年、オメガパフューム相手に2戦2勝という成績に加えて、名手御神本騎手の本拠地大井での戦いとなれば、3度目のジャイアントキリングがあっても決して不思議ではない。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。