JRA 緊急搬送4名、予後不良2頭の「大惨事」、原因となった騎手の「ノーダメージ」に現行ルールの欠陥浮き彫り?
2歳王者決定戦のホープフルS(G1)の開催された28日の中山競馬場では、ヤングジョッキーズシリーズのファイナルラウンドが行われた。
同シリーズは中央競馬と地方競馬の若手騎手が腕を競い合い、お互いの騎乗技術向上と年末の日本競馬を盛り上げるために、2017年に創設された。全国の地方競馬場で行われるトライアルラウンドの成績上位騎手が、大井競馬場と中山競馬場で行われるファイナルラウンドに進出できる。
中山競馬場でのファイナルラウンドは7Rと9Rに実施された。ただ、気になるのは3名もの騎手が乗り替わりとなっていることだ。
その答えは、前日行われたファイナルラウンド大井の第2戦に隠されている。
船橋競馬の篠谷葵騎手が勝利した第1戦から1時間10分後に行われた第2戦は、16頭立てのダート1200m戦。小沢大仁騎手のウェイキーが軽快に逃げるなか、アクシデントが発生した。
3コーナーで4・5番手を追走していた原優介騎手のアイエンジェルが、外側に斜行した影響で、併走していたプレジールドビブルが落馬。後続もプレジールドビブルの転倒の煽りを受けて、3頭も次々と落馬する惨事となった。
今回の落馬事故で4名の地方所属の若手騎手が緊急搬送され、診断の結果うち3名が翌日の騎乗を見合わせることに。また、落馬した2頭の競走馬が亡くなった。
事故の原因となったアイエンジェルの原騎手には、29日から来年1月1日まで4日間の騎乗停止の処分が下された。事故を引き起こした原騎手に、騎乗停止の処分を下すのは妥当な判断だろう。しかし、問題なのは停止の期間だ。
原騎手はJRA騎手で東京大賞典(G1)などの交流競走にも騎乗しないため、年内最後の騎乗は28日である。また、来年の中央競馬の最初の開催日は5日だ。つまり、原騎手にとって今回の騎乗停止は結果的に影響が無いのだ。
「原騎手が騎乗停止の期間などを決定するわけではないとはいえ、客観的に見て4頭も巻き込む落馬事故の原因となりながら、“実質”ノーダメージというのは流石にどうなのかなと思います。
中央競馬は日本中央競馬会、地方競馬は地方競馬全国協会がそれぞれ運営・管理している通り、運営母体が全く異なります。それゆえ、今回のような問題が発生してきます。
今後はコロナ禍が終息した影響で、またJRAの騎手が地方競馬との交流競走に顔を出す機会も増えてくることが予想されます。レースがある以上、事故が起きる可能性はゼロではありませんから、今後見直しを検討する必要がありそうです」(競馬記者)
図らずも事件の引き金になってしまった原騎手だが、翌日7鞍も騎乗しているように、昨年のデビューから着々と関係者からの信頼を得ている。今回の事件を猛省し、糧とすることに期待したい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……