JRA C.ルメール「乗りやすい馬」も中堅騎手だと引っ張り通し!? 鞍上弱化の“脚質転換”が素質馬に直撃
8日土曜から始まった新春恒例の3日間開催。最終日となった10日、中山競馬場では3歳牝馬限定重賞フェアリーS(G3)が行われた。
中山芝1600mのフルゲート16頭で争われた一戦を制したのは、M.デムーロ騎手がコンビを組んだ5番人気ライラック(牝3、美浦・相沢郁厩舎)だ。
スタートで出遅れたこともあり、一時は最後方からの追走となったが、外目を追い上げると最終コーナーで先行勢を射程圏に捉える。直線外から豪快な末脚を繰り出し、先に抜け出していた1番人気スターズオンアースをゴール前で差し切った。
オルフェーヴル産駒ライラックは、M.デムーロ騎手がかつて主戦を任されたことのあるラッキーライラックに名前も血統も通じるところがある馬。陣営が、血統的に距離が延びても問題ないとコメントしたように、クラシックでも期待が出来そうだ。
大舞台に強い名手が、不利を見事に跳ね返したのに対し、「鞍上弱化」の影響がモロに出てしまった感を拭えないのは、3着に入ったビジュノワール(牝3、美浦・中舘英二厩舎)かもしれない。
出遅れをリカバーした勝ち馬とは逆に、こちらはまずまずのスタートを決めながら、鞍上の大野拓弥騎手が手綱を引っ張り通し。レース映像でも道中、何度も首を左右に振って荒ぶるシーンが映されていた。
4コーナーの入り口でもスムーズさを欠いたまま、直線でもまだ10番手の後方。ようやく自由に走れるようになったタイミングで脚を伸ばし、フィールシンパシーとの3着争いをクビ差で制した。
「少しゲートで引っ張る形になってしまいました。それでも直線で外に出してからはすごくいい脚を使ったので、これからが楽しみな馬だと思います」
レース後のコメントでそう振り返った大野騎手だが、人馬がピタリと折り合うシーンは一度もなし。むしろ前進気勢の強い馬を制御することが出来ず、7番人気の伏兵で3着に入ったことすら不完全燃焼だったといえそうな内容だった。
「さすがにちょっとこれはどうかと思える騎乗でしたね……。実質直線しか競馬になっていないような内容でした。スタートから最後の直線までずっと引っ張り通しだったため、スタミナをかなりロスしたと思います。
ただ、これまでのマイナスがありながら、勝ち馬に次ぐ脚で伸びて来たことに驚かされます。スムーズなレースが出来ていれば、勝ち負け可能な能力があったと考えられます」(競馬記者)
昨年9月にC.ルメール騎手とのコンビでデビュー勝ちを決めた際は、好位から抜け出す優等生の競馬。4コーナー先頭から押し切る横綱相撲だった。
「スピードを見せてくれたので2番手で落ち着いて走れた。乗りやすい馬。そこからは長くいい脚で加速してくれた。能力がありそう」
当時のルメール騎手のコメントから、前に行けるだけのスピードもあり、「乗りやすい」とまで評していただけに、今回の“脚質転換” には疑問が残る。
とはいえ、大野騎手があそこまで強引に下げたことには、もしかしたら陣営の指示があったのかもしれない。
いずれにしても、ビジュノワールのルメール騎手から大野騎手への乗り替わりを鞍上弱化と考えたファンが軽視した結果、7番人気という低評価へと繋がったことは間違いなさそう。
血統的にも父キタサンブラック×母クーデグレイスの良血馬。むしろ、大きなロスがありながらこれだけの走りを見せたのだから、再びルメール騎手に手綱が戻るようなら、ノーマークにできない注目馬だろう。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。