JRA「いい馬ですけどね」5億円馬リアド「武豊包囲網」で万事休す……若駒S(L)単勝1.6倍も、約8か月ぶり「復縁」大塚亮一オーナーの期待に裏切りの結末
22日、中京競馬場で行われた若駒S(L)は、3番人気のリューベック(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)が勝利。秋華賞馬ディアドラの弟が、クラシックへ大きく前進した。
須貝調教師曰く「ゲート内でパニックみたいになった」という前走の札幌2歳S(G3)こそ6着に敗れたが、「一度、競馬を忘れさせる意味も含めて間隔を開けたのがよかった」と立て直しに成功。過去にマカヒキやディープインパクトなどが勝利した出世レースを制し、上昇気流に乗って本番を向かることになりそうだ。
その一方、クラシックにつながる大事なレースを不完全燃焼で終えてしまったのが、単勝1.6倍という圧倒的な1番人気に推されたリアド(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)だ。
「いい馬ですけどね……」
レース後、鞍上の武豊騎手がそう悔しがるのも当然か。7頭立て、芝2000mで行われたレースで好スタートを決めたリアドは、先に行きたがったリューベックを先に行かせる形の2番手からの競馬。
だが結果的には、これがすでに仇となっていたのかもしれない。
終始、勝ち馬の直後のインコースという絶好位をキープしていたリアドだったが、最後の直線では前を走るリューベックにグランディアらが並びかける。池添謙一騎手の「二枚腰を使ってくれた」という言葉通り、これで闘志に火が付いたリューベックだったが、リアドにとっては前に複数の馬が並ぶ“壁”の状態に……。
さらに、そこへ後ろにいたライバルたちが並びかけてくれば、リアドはいよいよ行き場がなくなって万事休す……。最後はリューベックが力強く抜け出したことで進路が開いたが、2着を確保するのが精一杯だった。
「うーん……リアドにとっては不完全燃焼というか、残念なレースになってしまいましたね。レース後に武豊騎手も『結果的に行き切った方が良かったかな』と話していましたが、いずれにせよ1枠1番からのスタートが、結果的に仇になってしまったのかもしれません。
やや強引になっても最内をこじ開ける選択肢もあったと思いますが、リューベックが内へ絞ったことで立て直さざるを得ない状況に。7頭立ての少頭数とはいえ単勝1.6倍の大本命でしたから、他馬からマークされるのも仕方ないとは思いますが……。まさに包囲網のようになって、完全に行き場を失ってしまいました」(競馬記者)
2019年のセレクトセール当歳にて、最高額となる5億760万円(税込)で取引されたことで、早くから注目を集めていたリアド。今回は新馬戦で騎乗した福永祐一騎手が落馬負傷中という事情もあって武豊騎手に白羽の矢が立ったが、大塚亮一オーナーの馬に騎乗するのは、これが約8か月ぶりだった。
「武豊騎手と大塚オーナーといえば、オーナーにとっての初G1勝ちを飾った菊花賞馬ワールドプレミアが有名ですが、昨年に本馬が天皇賞・春(G1)に出走する直前に、武豊騎手が落馬負傷。厳密には復帰が間に合っていたのですが、オーナーサイドは福永騎手を選択しました。
その後、天皇賞・秋(G1)で復帰したワールドプレミアですが、鞍上は武豊騎手ではなく、岩田康誠騎手でした。その間、武豊騎手は大塚オーナーの他の馬にも騎乗しておらず、今回のリアドは“コンビ復活”と期待されていたのですが……」(同)
「細かい出し入れが得意じゃない。いい馬ですけどね」
レース後、そう敗因を挙げた武豊騎手。この日は2勝を挙げる活躍だったが、騎乗唯一の1番人気を裏切ってしまったこの敗戦は痛恨に違いない。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。