JRA 3年間「未勝利馬」が武豊に替わって7馬身差圧勝…かつての関西ホープ騎手に突き付けられた「厳しい現実」
22日、中京競馬場で行われた遠州灘S(3勝クラス)は、3番人気のクリノフラッシュ(牝7歳、栗東・橋田満厩舎)が勝利。18年12月以来、約3年ぶりの勝利を挙げてオープン昇級を果たした。
好スタートから逃げるメイショウヨソユキの番手を追走。楽な手応えから4コーナーで逃げ馬を捕まえて早くも先頭に立つと、あとは突き放していく一方。最後は7馬身差の圧勝だった。
18年12月に2勝クラスを卒業して以来、約3年間で16戦。20年桜島S(3勝クラス)で昨年のBCディスタフ(米G1)を優勝したマルシュロレーヌに肉薄するなど、「オープン昇級は時間の問題」と言われてきた素質馬だが、3勝クラスの足踏みが続いていた。
気付けば7歳と高齢の域に達しており、陣営にも「引退」の2文字がチラつき始めていたかもしれない。そんな状況下で迎えた今年初戦。約3年間、現級で停滞していた馬とは思えない圧巻のパフォーマンスを披露した。
「いやー、驚きましたね。前走はスタートで遅れたとはいえ、10着に大敗した馬です。正直3勝クラスでは頭打ちなのかな、と思い始めた時に7馬身差の圧勝ですから(笑)。牡馬相手に好走してきた馬ですから、今回の牝馬限定戦は相手関係が楽だったこともあるでしょう。
ただ、1番の勝因は武豊騎手が騎乗したことではないでしょうか。
近頃のクリノフラッシュはスタートを苦手としていたんですが、この日はそんな馬とは思えないロケットスタート。武豊騎手はスタート名人とよく言われますが、本当に上手ですね」(競馬記者)
クリノフラッシュには、ここ13戦連続で和田翼騎手が騎乗していた。3勝クラスで2着2回3着2回と、勝利に近づくも足踏みが続いたまま約3年が経過した経緯がある。今回の7馬身差圧勝には、主戦騎手として思うところもあるはずだ。
和田竜二騎手の親戚という触れ込みで2013年にデビューし、現在までJRA通算121勝の和田翼騎手。1年目に若手騎手に贈られる中央競馬関西放送記者クラブ賞を受賞し、関西のホープとして期待されていたが、自己ベストは17年の28勝と成績が伸び悩んでいる。
そんな和田翼騎手にとって、数少ないお手馬の1頭がクリノフラッシュだった。だが、武豊騎手に替わった途端、7馬身差の圧勝で3年ぶりの勝利となっては、一部のファンから「騎手の差」という話題が挙がっても仕方がないかもしれない。
「和田翼騎手は昨年1月23日に挙げた1勝以来、勝ち星から見放されており、現在114連敗中。自己最高だった17年から年を重ねるごとに、騎乗数も勝利数も減少しています。そこに自身が主戦だったクリノフラッシュの勝利ですからね……。厳しい状況です」(同)
「スタートも出たので、良いポジションが取れて、4コーナーも良い手応えで迎えられました。しっかり伸びてくれました」というのは、レース後の武豊騎手の談話だ。果たして、和田翼騎手が再びクリノフラッシュに騎乗できる機会はあるのだろうか。
元愛馬が別の騎手で勝利する悔しさを糧に、和田翼騎手が奮起することに期待したい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……