JRA 1年で一番面白いレースは根岸S(G3)!? フジテレビ名物実況・青嶋アナの「神実況」と競馬大好き人気芸人も愛した「鬼脚」牝馬

 今週末の中央競馬は東西で2つの重賞が組まれている。30日、中京競馬場では芝1200mのシルクロードS(G3)、そして同日の東京競馬場ではダート1400mの根岸S(G3)が行われる。

 どちらも後のG1につながる重要な前哨戦だ。そんな両方のレースを制した馬が1頭だけいる。2000年2月にシルクロードSを、同年11月に根岸Sを制覇したブロードアピールである。

 昨年2月に定年引退した松田国英調教師が管理し、G1タイトルには縁がなかったが、芝とダートの短距離重賞を合計6勝。生涯で5億円以上の賞金を稼ぎ出した名牝だった。

 ブロードアピールを語る上で欠かせないレースが自身重賞2勝目を飾った2000年の根岸Sだろう。当時は現在より1ハロン短い、今は無き東京1200mが舞台。すでに6歳秋を迎え、久々のダート戦だったにもかかわらず堂々の1番人気に支持された。

「ブロードアピールは重賞初勝利が6歳になってからという晩成タイプの馬でした。8歳3月まで現役で走り、当時から強烈な差し脚で人気を集めていました。特に根岸Sで見せた鬼脚は今も語り草になっています。

もちろん最後の直線で14頭をごぼう抜きにした末脚もスゴかったのですが、このレースに彩りを加えたのが実況を担当したフジテレビ・青嶋達也アナウンサーの熱い実況でした」(競馬誌ライター)

 レースは3番人気エイシンサンルイスがハナを奪い、マイペースの逃げ。前半3ハロン34秒1と決して速い流れではなかった。実際にエイシンサンルイスは2着に逃げ粘り、3~4着馬も4角4番手以内という前残りの展開だった。

 そんなレースでブロードアピールは直線大外をブン回して、1頭だけ違う脚色で追い込んできた。残り400mを切った辺りでもまだ後方3~4番手にいたが、青嶋アナはいち早くその伸び脚を察知。残り300m地点で、すでにブロードアピールの名前を叫んでいたのだ。

「『外から飛んできたブロードアピール!しかし前までは5~6馬身以上ある』と、絶叫した青嶋アナですが、実際に映像を見るとこの時点(残り200m)でもまだ10馬身近くの差があったように見えます。しかし、あっという間に差を縮め、最後は余裕を残して差し切りました」(同)

「スゴい脚、ブロードアピール、3番手!2番手!前に届くか!届くか!届くか!届くか!届いた!届いた!差し切り勝ち!スゴい脚だ!」

 短距離レースの実況には定評がある青嶋アナだが、このレースで見せた“回転の速さ”はまさに神がかっていた。

 そんなブロードアピールと根岸Sを心から愛するお笑い芸人もいる。

「競馬好きで知られるカンニング竹山さんですが、とにかくブロードアピール愛が有名です。とある競馬番組でこのレースのスゴさを力説した際、『1年で一番面白いレースは根岸Sだよ!』という名言も生まれました。根岸Sが開催される日の『みんなのKEIBA』(フジテレビ)には決まってゲスト出演し、熱弁を振るっています(笑)」(同)

 22年前に鬼脚でその名を広めたブロードアピール。引退後は繁殖入りし、10頭以上の産駒をターフに送り出したが、オープン馬は1頭も出なかった。それでも孫世代からはワグネリアンが18年ダービー馬に輝き、その全妹ミスフィガロは昨年の秋華賞(G1)に出走するなど奮闘中だ。

 残念ながらブロードアピールは昨年9月に、そして孫のワグネリアンは今月5日に急死した。今週末の根岸Sを前に今一度22年前の伝説の鬼脚を振り返ってみてもいいのではないだろうか。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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