JRA 制裁王に油断騎乗、減量失敗……。「崖っぷち」昨年デビュー世代の過酷な現実
8日、JRAから2022年度の新規騎手免許試験合格者が発表された。現役の小牧太騎手を父に持つ小牧加矢太騎手など計10名が見事合格。来月からJRA新人騎手として新たなスタートを切ることになる。
デビュー2年目を迎え、先輩となった世代で特に注目されたのが女性騎手の永島まなみと古川奈穂の2名だろう。女性騎手が同時に複数デビューしたのは1997年以来ということもあり、デビュー前から各メディアに引っ張りだこだった。
しかし、話題を集めたルーキーイヤーの成績は共に7勝で終わり、ムチ一本で戦わなければならない勝負の世界の厳しさを痛感したことだろう。
他の同期騎手もまた、プロの厚く高い壁に阻まれている印象が強い。近年では最多となる8名がデビューとなったが、半数の4名が1桁勝利と苦戦している。
1年目から唯一、目立った活躍をしたのが小沢大仁騎手だ。年間31勝を挙げて、30勝以上した新人騎手の中で最多勝の者に与えられる「JRA賞最多勝利新人騎手」を受賞。これに該当する新人騎手が1人もいない年は「該当者なし」となるため、辛うじてその危機だけは救ったことになる。
ただ、同賞を受賞した歴代の騎手の中で最も少ない勝利数となっており、世代のレベルの低さは否めないかもしれない。
そして、この世代は何かと騎乗面などに問題のある騎手が多かった印象も残した。
昨年度のJRAにおける騎手制裁点ランキング、いわゆる制裁リーディングで当世代の騎手がワンツーフィニッシュを決めたのだ。制裁は危険騎乗を行った際などに順次加点されるため、上位にいけばいくほど不名誉なものとされているだけに、関係者からの評判にも直結してくる。
「昨年の制裁リーディングの1位が松本大輝騎手で、2位が角田大和騎手でした。
松本騎手は『決勝線手前での騎乗ぶりについて』、俗に言う油断騎乗を2度も犯したことが、制裁点1位に響きましたね。角田騎手は斜行等の危険な騎乗が多く、その影響で制裁点数を増やしていきました。
危険な騎乗や懸命に1つ上の着順を目指さない騎乗を続ければ、次第に関係者から信頼を失っていくかもしれません。気を引き締めて1つ1つ大事に乗ってほしいですね」(競馬記者)
また、同世代の西谷凛騎手は再三「負担重量について注意義務」を怠ったことで、戒告などの処分を現在まで6回受けている。
「5日の中京1Rで西谷凛騎手に『負担重量について注意義務』で過怠金5万円の重い処分が下っていますが、実は先週に続いての斤量制裁になります。昨年5月には減量中に脱水症状に陥っての乗り替わりもありましたし、同期最下位の通算4勝と苦しんでいることから、いよいよ父の西谷誠騎手と同じ障害騎手に転向するかもしれません。
リーディング上位や重賞を複数回制した騎手もいる4年目世代や、横山武史騎手らを輩出した6年目世代と比較すると、2年目世代は全体的にちょっと伸び悩んでいるような気がします。
3月から新たに9名ものライバルが増えることから、減量特典のある新人騎手とも騎乗馬を奪い合うようになります。生き残りを懸けて、ここからが正念場ですね」(同)
優勝劣敗はどの世界でも共通することだけに、チャンスがある今だからこそ、各方面に己の存在をアピールしておく必要がある。果たして2年目世代はこれから爪痕を残していくことができるだろうか。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……