JRA C.ルメールの「失態」に藤沢師もチクリ……、輝き取り戻した“新しいグランアレグリア”が再浮上! 名伯楽も最後のクラシック候補に自信あり?
得意舞台に戻った“新しいグランアレグリア”が躍動した。
20日、東京競馬場で行われた5Rの1勝クラス(芝1600m)は、C.ルメール騎手の1番人気ラスール(牝3、美浦・藤沢和雄厩舎)が優勝。春のクラシックに望みを残す2勝目を手に入れた。
「大人になった。いいポジションを取れたし、今日は冷静に走ってくれた。直線では長くいい脚を使えた。能力があります」
コンビ3戦目となったルメール騎手がそう振り返ったように、前半のペースが上がった前掛かりの展開ながら、好位から早めに抜け出して押し切る強い内容だ。単勝1.5倍の断然人気に応え、2着アグリに2馬身差をつける大楽勝。重馬場ながら、1分34秒4でまとめた勝ち時計も重賞級の能力を感じさせる。
昨年10月東京のデビュー戦を圧勝し、ルメール騎手から「新しいグランアレグリアです」という極めて高い評価を与えられたことで、早くもクラシック候補の呼び声もあったラスール。期待の新種牡馬としてブレイク中のキタサンブラック代表産駒として、牡馬は昨年の東京スポーツ杯2歳S(G2)を制したイクイノックス、牝馬はラスールが双璧という評価がされつつあった。
これまで多くの名馬に跨ってきた名手をして、現役時代にG1・6勝を挙げた名牝の名前が出たほどの期待馬に早くも2戦目で土がついたのが、7着に敗れた前走のシンザン記念(G3)だった。
スタートで出遅れると、道中でもインの後方と苦しい位置。リズムを欠いたこともあり、頭を上げるシーンもあった。折り合いがつかなかった影響もあってか、最後の直線を迎えてもスムーズな進路を取れないまま、自慢の末脚は不発。単勝1.8倍の圧倒的1番人気を裏切ってしまった。
「ルメール騎手も前走の敗戦を糧にうまくアジャストしてきましたね。今回は好スタートを決めると、無理に下げずに好位で折り合う競馬を選択。自分からレースを作っての押し切りですから強い勝ち方です。
積極策を採ったのは、パートナーのポテンシャルに絶対の自信があったからでしょう。デビュー戦も同じような位置取りから突き抜けたように、強気な乗り方が合ってそうですね。課題は、3戦のうち2戦で出遅れているようにゲートでしょう」(競馬記者)
1勝クラスとはいえ、ここでしっかりと結果を残したことは大きい。桜花賞(G1)はまだわからないが、オークス(G1)にはまだまだ時間もある。
「この間も、今回のような競馬をしてくれればよかったのにね。今後も頑張ってくれるでしょう」
“予定通り”の勝利を振り返った藤沢調教師は、主戦のルメール騎手にチクリ。そんな冗談がこぼれるほど、手応えがあったのだろう。
2月一杯で勇退を控えるため、自身の手で晴れ舞台に送り出すことはできないが、最後に手掛けたクラシック候補の明るい未来を思い描いているに違いない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。