JRA C.ルメール「強奪」神騎乗も陣営は複雑!? 最速上がり「32秒9」の逃げ切り披露も鞍上問題避けられず
19日、阪神競馬場で行われた9Rつばき賞(3歳1勝クラス)は、C.ルメール騎手の2番人気テンダンス(牡3、栗東・中竹和也厩舎)が勝利した。勝ち時計は1分49秒6。2走前の東京スポーツ杯2歳S(G2)で3着、前走の京成杯(G3)で5着と重賞でも善戦していただけに、ここでは格の違いを見せつけた。
「前で冷静に運べました。息が入ったし、物見をしたところはありましたが、徐々に伸びてくれました。乗りやすい馬、距離は延ばしても大丈夫です」
手綱を取ったルメール騎手が、パートナーを高く評価したのも納得の走りだった。
少頭数7頭立て芝1800mで行われたレース。2枠2番からスタートしたテンダンスは、外の馬が一斉に控えたため、押し出されるように先頭に立つ。競り掛ける馬もおらず、1000m通過は1分4秒4の超スローのマイペースに持ち込むと、楽な手応えのまま最後の直線を迎える。
究極の瞬発力勝負となった直線では、2番人気のダノンブリザードや3番人気のアルナシームが猛然と追い込んでくるも、逃げたテンダンスにラスト3ハロン32秒9の脚を使われては敵わない。結局ゴールまで差は縮まらないまま、逃げ切ってのゴールとなった。
「前走は、鞍上の和田竜二騎手が控える競馬を意識して、馬込みの中での競馬を教えていました。しかし、その影響もあって最後の直線でスムーズな進路取りが出来ず、追い出しが遅れたこともあって不完全燃焼に終わっています。
今回テン乗りとなったルメール騎手は、無理に控えることはせず、自然と逃げる形になりました。時計面は強調できませんが、上がり最速なら問題ないでしょう。馬のリズムを優先したルメール騎手の好判断といえそうです。
3走前の同舞台では、走破タイム1分46秒9と早い時計でも圧勝していますし、今回の負かした相手を見ても、実力は本物と言っていいでしょう」(競馬誌ライター)
人気に応える完封劇に、ネット上の掲示板では「流石ルメール」「ペースが完璧」「神騎乗」など、賞賛の声が多くあがった。勿論、陣営にとっても嬉しい勝利であるに違いない。
だが、今後の方向性を考えると少々複雑な想いがある。
「テンダンスの兄カデナは17年の弥生賞(G2)を勝っていますし、次戦は皐月賞トライアルを使う可能性が高いです。陣営も早い時期からクラシックを意識したコメントをしていましたし、目標は皐月賞(G1)と考えるのが自然です。
しかし、ルメール騎手にはイクイノックスという大本命の存在がいますし、もし仮にイクイノックスが出走できない事態があっても、先日の共同通信杯(G3)で2着したジオグリフもいます。どのトライアルを使って結果を出したとしても、本番でルメール騎手が乗ること自体難しいでしょう。
テンダンスの過去3戦で騎乗した和田騎手も、皐月賞はテイエムオペラオーで制して以来縁がないですから、手綱が戻ることがプラスとは言いづらいですし、陣営としてもどこか素直に喜べない面もあるのではないでしょうか」(同)
クラシック出走へ向けて大きな2勝目となったが、本番の鞍上問題も含め、陣営が下す今後の方向性にも注目したい。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?