JRA C.ルメール「平場」でガッツポーズの大逆転!「もう無理だと思った」絶体絶命のピンチを救ったドゥラメンテ級末脚

C.ルメール騎手

「もう無理だと思った」

 これはレースに騎乗していたジョッキーだけでなく、見ていたファンも同じ気持ちだったかもしれない。

 フェブラリーS(G1)が行われた20日の東京競馬。8R(4歳上2勝クラス)は、C.ルメール騎手の1番人気ドゥラモンド(牡4歳、美浦・手塚貴久厩舎)が勝利。2020年9月以来の嬉しい2勝目を挙げた。

 16頭で争われた芝1400m戦。3戦連続2着と惜敗続きだったドゥラモンドは単勝2.3倍と高い支持を得たが、スタートで後手を踏んでしまう。その結果、行き脚もつかないまま、後方2番手からの苦しい競馬を余儀なくされた。そこで、鞍上の口から飛び出たのが、冒頭の台詞である。

 ゲンパチアイアンが軽快に飛ばすなか、ルメール騎手は急かさずじっくり脚をためて直線へ。残り2ハロンあたりでスパートをかけると、グイグイと大外から進出。グレイトオーサー、スーパーホープをゴール前捉えて、クビ差の接戦をものにした。

 まさに大外一気を絵に描いたようなゴボウ抜きに、ルメール騎手もゴール後に平場ながらガッツポーズ。また、レース後のインタビューでは「よく届いてくれた」と、ホッと胸をなでおろした。

「見ていて気持ちの良いレースでしたね。最終追い切りは同じレースで人気を分け合ったアップストリームと併せたのですが、先行しながら遅れるなど調子が悪そうだなと思っていました。ですから、スタート後の雰囲気などからもうダメなのかなと……。

手応えよく直線に向いたとはいえ、位置はかなり後ろでした。他の人気馬は好位を追走していたので、よくて掲示板あたりかなと思いきや勝ってしまうとは驚きです。

開催最終週で内が荒れて外が伸びる馬場、『ペースが速くて良かった』と話すルメール騎手の言葉通り、前半3ハロン34秒4のハイペースなど様々な要因が重なったとはいえ、素晴らしい追い込み勝ちです。

一瞬、お父さんの影がチラつきましたよ(笑)」(競馬誌ライター)

 ドゥラモンドは2015年の春クラシック2冠を圧勝したドゥラメンテ産駒だ。父は上がり3ハロン33秒9の末脚を繰り出し、当時のレースレコードで日本ダービー(G1)を制した。対するドゥラモンドの上がり3ハロンタイムは重馬場ながら34秒1だ。距離に違いはあれど、重馬場で父の生涯最高レースに迫る末脚を発揮したのだから、現役時代の父を思い浮かべるのも無理はないだろう。

 デビュー2連勝で武豊騎手の朝日杯FS(G1)のパートナーにもなったドゥラモンドだが、勢いがあった2歳時から一転し、重賞2戦は2桁着順が続いた。

 だが今回、勝ち切れないレースが続いた自己条件を勝利したことで、再び上昇気流に乗って行けそうな雰囲気だ。父から譲り受けた決め手を武器に、オープンの場で活躍する日はそう遠くないかもしれない。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

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