JRA「持ってる」武豊が密かに燃える!? 阪急杯(G3)惨敗続きからの“神騎乗”で「先生を男泣きさせる走り」を実現!

武豊騎手

 27日、阪神競馬場では芝1400mを舞台に阪急杯(G3)が行われる。このレース22度目の騎乗となる武豊騎手は、サンライズオネスト(牡5歳、栗東・河内洋厩舎)とのコンビで臨む。

 そのサンライズオネストが栗東トレセンで話題になったのは先週のこと。16日、坂路での1週前追い切りで4ハロン48秒2、ラスト12秒6を記録。スポーツ各紙はこの日唯一、50秒を切った“超抜”時計を褒めちぎった。

 ところが、騎乗していた武騎手はというと……。

「先週の坂路の追い切りに乗せてもらって、一気に持って行かれた数字が4ハロン48秒2。流行りの言い方をすればボクのパーソナルベストですが、うれしさはありません」

 23日付の公式サイトの日記にそう記した武騎手。「12.4-11.4-11.8-12.6」というラップタイムと、その文面から武騎手がサンライズオネストを制御できなかったことは明白なようだ。

 それでも23日の最終追い切りを理想的な加速ラップで54秒2-12秒3にまとめると、河内調教師からは「十分気合も乗っているし、具合はいい」と自信のコメントが飛び出した。前走カーバンクルS(OP)を強い内容で勝利し、今が充実期。3勝を挙げる阪神コースなら大駆けも望めそうだ。

 もし武騎手が勝てば、2018年以来、3度目の阪急杯制覇となる。まだ記憶に新しい4年前、武騎手は5歳牝馬のダイアナヘイローに騎乗し、この日で定年を迎える福島信晴調教師(当時)に有終の美をもたらした。

 レース直前の日記に、武騎手はこう記していた。

「大変お世話になった福島信晴先生のダイアナヘイローに騎乗します。福島先生を男泣きさせる走りができたら、と密かに燃えています」

 ダイアナヘイローは前年夏に4連勝で北九州記念(G3)を制覇。続くスプリンターズS(G1)では、牡馬に混じって4番人気の支持を集めた。しかし、結果はブービーの15着。続くシルクロードS(G3)でも1番人気を裏切り、16着に大敗していた。

 2戦連続の2桁着順で評価は急落。阪急杯は単勝7番人気の伏兵扱いだった。ところが、レースでは外目の枠からハナを奪うと、緩やかなペースに落とし込み、直線しぶとく粘り込んで先頭でゴールを駆け抜けた。1~5着馬までが0秒1差、14着馬までが0秒5差という大激戦を見事逃げ切ったのだ。

 レース後のインタビューに「今日は(引退する)福島先生の最後の重賞でしたからね」と切り出した武騎手。「最後はさすがに一杯一杯で、『勝ってくれ』と神様にお願いしました」と最後の直線では“神頼み”だった心中を明かした。

 一方、感涙の福島調教師はレース後、『スポーツナビ』の取材に「最後だけに、力が入ったね。豊君は馬の引退レースでもよく勝っているし、僕の引退にも勝ってくれたね。豊君が“持ってる”んじゃないかな」とコメントすると、武騎手もこれに反応。

 数日後の日記に「(ダイアナヘイローが)逃げ切れたのは先生が“持っていた”からでしょう」と武騎手らしい“返し”を繰り出した。

 実は、武騎手の阪急杯初勝利も逃げ切りだった。遡ること33年前の1989年、当時は6月に行われていた一戦でホリノライデンという馬に騎乗し、まんまと逃げ切ってみせている。

 今年、武騎手が騎乗するサンライズオネストは、未勝利戦と1勝クラスを逃げ切って勝ち上がっている。確たる逃げ馬が不在のメンバー構成で、武騎手に4年前のイメージが残っていれば、3度目の逃げ切り勝ちもあながち夢ではないかもしれない。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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