JRA戸崎圭太あわや「騎乗ミス」の窮地を救ったオークス馬候補! 「油断騎乗」疑惑も霞んだ異次元の鬼脚
27日の中山競馬は、メインレースの中山記念(G2)を吉田豊騎手とパンサラッサのコンビが見事な逃げ切り勝ち。福島記念(G3)を圧勝した際、一部ではツインターボに重ねる声も出ていたが、今後の走り次第ではもしかするとサイレンススズカと評されることもあるのではないか。
騎手が折り合いばかりを気にして控えた結果、超スローからの切れ味勝負となることが珍しくない中、玉砕覚悟の逃げを打つ姿には潔さすら感じられた。駆け引きを度外視した粉骨砕身の走りは、春のG1戦線でも台風の目となりそうだ。
だが、パンサラッサが大きな注目を集めた中山記念以外にも、春のクラシックで秘密兵器になりそうな逸材がいたことにも触れておきたい。
それはメインレースから遡ること約1時間前の10Rデイジー賞(1勝クラス)を楽勝したルージュエヴァイユ(牝3、美浦・黒岩陽一厩舎)のことである。
「新馬戦が強い勝ち方だったので自信を持っていきました。流れには乗っていましたが、後方から自分の競馬をしました」
レースをそう振り返った戸崎騎手だが、早々について行けなくなったルミネイトを除くと、集団の最後方という道中の位置取りは、見ている側からすれば肝を冷やしただろう。
9頭立て芝1800mのレース。オンリーオピニオンがハナを主張し、2番手にサンカルバがつけたレースは、平均よりやや遅めのラップで先行勢に有利な展開だった。
対するルージュエヴァイユの戸崎騎手は、無難にスタートを決めながら、意外にも控える選択。先行馬群から少し離された後方2番手のポジションは、ペースを考えると消極的にも思える。
さすがに後ろ過ぎると感じたのか、1000mを過ぎた辺りで後方から3番手に進出し、3~4コーナーに掛けて追い上げを図ったものの、先頭との距離はまだまだ残されていた。
開幕週の中山で前の馬に余力が十分残っている状況で、残り200mを過ぎてとても届かないような位置。万事休すかと思われた矢先、伸びあぐねる後方待機勢からただ1頭抜け出してきたのがルージュエヴァイユだった。
追い出されてからの末脚は、まさに異次元ともいえる切れ味。完全に勝ちパターンに持ち込んだ2着馬を、圧倒的なスピードで瞬く間に抜き去ってしまったのだから、ここでは「モノが違った」という感想しかない。
「着差こそクビですが、何度やってもこの馬が勝ったと思える強さでした。それほどルージュエヴァイユの末脚は強烈だったというしかありません。あまりの手応えの良さにゴール前の戸崎騎手は追ってすらいなかったくらいです。
ただ、鮮やかな差し切りに見えて、一歩間違えれば届かないような後方待機策だったことも事実です。スローペースを自分から下げた上に、慌てて追い出したようにも映りましたから……」(競馬記者)
ただ、裏を返せばそれだけ大胆な騎乗をしても、鞍上には勝てるだけの自信があったということなのだろう。
思えば昨年の有馬記念(G1)前日、横山武史騎手が油断騎乗疑惑により、騎乗停止処分を受けたのもこの馬が「勝ってしまった」のが原因だった。その一方で、今回の走りを見せられると、これはもうフロックではなかったということにもなる。
これでデビューから2戦無敗となった訳だが、底知れないポテンシャルの高さはおそらくクラシック級。時期的にオークス(G1)が春の大目標になるだろうが、この強烈過ぎる切れは、直線の長い東京でとてつもない脅威となるに違いない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。