JRA 石川裕紀人「申し訳ないです」断然1番人気まさかの敗戦にガックリ!? 崩れ去った名門厩舎の右腕スタッフに贈る「感動」レース

石川裕紀人騎手

「人気に応えることができなくて申し訳ないです」

 一見すると馬券を購入したファンへの謝罪に見えるが、もしかしたら関係者にも向けられているかもしれない。

鮫島克駿「痛恨の選択ミス」で師匠の花道を飾れず……

 27日、中山競馬場で行われた最終12R・4歳上2勝クラスは、2番人気のロンコーネがゴール前の競り合いを制して優勝。前走の1勝クラスからの連勝を果たした。

 このレースでロンコーネと人気を二分したのが、単勝1.9倍の支持を集めた石川裕紀人騎手の1番人気アナンシエーション(牡4歳、美浦・手塚貴久厩舎)だ。

 15頭立てで争われたダート1800m戦。ゲート内で落ち着きを欠いたアナンシエーションは、スタート出脚がつかず後方からの競馬を余儀なくされる。ただ、1番人気に支持されるだけの馬あって、勝負どころで手応えよく進出して直線に入る。

 だが、石川騎手は外には持ち出さず、馬込みを割って入ることを選択したものの、手応えほど伸びず。後方から一気に脚を伸ばしてきたライバルたちに追い負けて、5着に敗れてしまった。同騎手は「スタートで遅れて、あの位置からのレースになりました」と悔やんでいることから、理想の位置が取れなかったことが敗因の1つに考えられる。

 アナンシエーションはデビュー戦で同日の3歳以上1勝クラスとコンマ1秒差の走破時計で勝利したことから、早くから出世が期待されていた素質馬。その後は勝ち切れないレースが続いて、現時点では2勝クラスの身だが、3走前に今回と同じ中山ダート1800mの1勝クラスで5馬身差の圧勝を収めていることから、圧倒的な支持を集めていた。

担当の厩務員はこれが引退レース

 戦前の手塚師も「今度は決めたい」と話していただけに、この敗戦はショックかもしれない。今回のレースはどうしても勝ちたい理由があったからだ。

「実は今月末をもって、手塚厩舎を開業当初から支えてきた厩務員の滝口(政司)さんが定年で引退します。その滝口さんにとって最後の担当馬の出走がこの日の中山最終レースのアナンシエーションだったのです。

手塚師の『今度は決めたい』という言葉も、厩舎の大事な屋台骨として活躍された滝口さんに最後の勝利を贈りたいという気持ちで発言したのかもしれませんね」(競馬誌ライター)

 厩務員は何頭も馬を担当するわけではないため、担当馬の勝利は喜びもひとしおだろう。そして、それが自分の最後のレースで達成できたら厩務員冥利に尽きるはずだ。

 手綱を取った石川騎手としても、滝口さんに最後の勝利をプレゼントしたかったであろう。それだけにアナンシエーションが不完全燃焼に終わったことは、騎手、関係者全員にとって痛恨の敗戦だったに違いない。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

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