JRA「遅咲きのサイレンススズカ」が豊と挑む海外遠征! 伏兵扱いだからこそ勝算ありなワケ、最大の後押しは海外と日本との決定的な「認識」の違い?

吉田豊騎手

 先月の中山記念(G2)を制し重賞2勝目を挙げたパンサラッサ(牡5歳、栗東・矢作芳人厩舎)が、今月26日にアラブ首長国連邦のメイダン競馬場で行われるドバイターフ(G1)に出走を予定していることが分かった。また、前走に引き続き吉田豊騎手が騎乗する事も併せて発表された。

 海外でも豊の名がつく日本人ジョッキーと言えば、武豊騎手が第一人者として名を馳せている。しかし、今回はリージェントブラフで参戦した2004年のドバイワールドC(G1)以来、18年ぶりの海外遠征となる、東の『YUTAKA』を背に、世界へ挑む事になった。

 豊が演出した「遅咲き」のサイレンススズカ!

 今回パンサラッサが出走するドバイターフは、過去にアーモンドアイやリアルスティールなどの日本調教馬が勝っている相性の良いレースだ。今回も英国のブックメーカーでは日本のシュネルマイスターが人気上位となっており、日本馬への期待の高さが伺える。

 一方で、同じ日本のパンサラッサはG1での実績が乏しい為か、現時点での人気は高くない。ただ、果敢な大逃げを見せるレーススタイルから、往年の名馬サイレンススズカやツインターボに例えられるなど、ファンの度肝を抜くモデルチェンジで覚醒したパンサラッサにも十分勝機はありそうだ。

パンサラッサの勝機

 勝つための手段として逃げる日本とは異なり、海外の逃げ馬は極端なスローやハイペースにならないようペースをコントロールする役割を任されるのが殆ど。いわゆる“ラビット”と呼ばれる存在であり、立場的にも日本のような大逃げは見られない。

 その為、勝ち負けレベルの逃げ馬への対応にライバル騎手が不慣れなところに付け入る隙がある。過去にはパンサラッサと同じく逃げを得意とするエイシンヒカリが海外G1を2勝するなど、日本で結果を残した逃げ馬は海外でも通用している。

 海外のG1などでは、道中は余計な動きはせず各馬しっかりと脚を溜め、最後のロングスパートで勝負を決する展開が主流で、道中は比較的スローペースになるレースが多い。そんな中で、海外では無名に近い吉田豊騎手とパンサラッサのコンビが軽視され、各馬が後方で牽制し合うようなら、日本で異次元のペースで逃げ切りを決めた同馬にとってはおあつらえ向きの展開になる可能性は十分あるだろう。

 また同馬は、道中一旦スローペースに落として引き付けるのではなく、自身のペースを保ちながら逃げていくタイプの逃げ馬だ。それだけに、同馬を良く知る吉田豊騎手が継続して騎乗する事は頼もしい限りだ。

海外遠征豊富な矢作厩舎

 さらに管理する矢作厩舎は、昨年だけで海外G1を4勝するなど海外遠征で素晴らしい結果を残している。その要因の1つに、管理馬の適性を見抜く能力が高い事が考えられる。

 マルシュロレーヌがBCディスタフ(G1)に出走した意図を「米国のダートは日本とは全く異質で、芝もこなせる馬が適応すると思ってきた」と挙げていた。

 それが見事にハマって日本馬がダートの本場の米国G1を初勝利することに結び付いた。今回のパンサラッサも同様に、海外のレースへの適性の高さを見いだしているのかもしれない。

 サイレンススズカやツインターボを思い起こさせるパンサラッサと、名牝メジロドーベルの主戦だった吉田豊騎手という、オールドファンには何とも堪らないシブいコンビが異国の地で躍動する事を期待したい。

(文=椎名佳祐)

<著者プロフィール>
 ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。

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