JRA過去にはアグネスデジタル1頭だけ…カフェファラオの安田記念(G1)参戦で問われる「真・二刀流」の可能性。「カフェ」軍団生みの親から受け継いだ、飽くなき挑戦の続き

「今後については、馬の状態が第一ですから、確認して、オーナーと相談して、色々な選択肢を考えていきたいと思います」

 先月20日、フェブラリーS(G1)で連覇を果たしたカフェファラオ(牡5、美浦・堀宣行厩舎)を管理する堀師は、レース後にそう語っていた。

 この「色々な選択肢」のなかに、まさか安田記念(G1)への参戦プランが含まれているとは、誰が予想できただろうか。昨夏には、芝レース初挑戦となった函館記念(G3)で9着に敗れ、多くのファンや競馬関係者は「もう芝で走ることはないだろう」と高を括っていたはずだ。

 しかし、思い返せば、その函館記念で当時鞍上を務めていたC.ルメール騎手は「距離や芝は大丈夫でした。しかし、1番枠で狭くなってしまいました。彼は狭くなると気にしてしまう馬なので、それがなければ、もっと良い競馬になったと思います」と振り返っており、周りの馬に包まれてしまったことを敗因として挙げていた。

 ひょっとすると陣営は、この時点で「芝が合わない」という我々競馬ファンの思考とは全く違った感触を抱いていたのかもしれない。

 そうはいっても、むやみやたらに芝G1の安田記念を使うわけではなかろう。そこにはいくつかの理由があるはずだ。

「今年のフェブラリーSでは、重馬場の影響もありましたが、勝ち時計1分33秒8という芝重賞並みの高速決着に対応しての完勝でした。東京ダート1600mでは4戦4勝と無類の強さを誇っているカフェファラオにとっては、『左回りのワンターン』『距離1600m』という条件さえ揃えば、芝でもやれると陣営は踏んでいるのかもしれません。

さらに、管理する堀厩舎は過去の安田記念においてリアルインパクト、ストロングリターン、モーリスで計3勝しており、相性も抜群です。もちろん今回の決断は、陣営に勝算があっての挑戦だと思いますよ」(競馬誌ライター)

 そして、この安田記念への電撃参戦は、カフェファラオを所有する冠名「カフェ」で知られる西川光一オーナーが、父・清氏から預かった飽くなき挑戦の続きでもある。

「現在の『カフェ』軍団の生みの親である西川清氏は、マンハッタンカフェやイーグルカフェでG1を制した名オーナーです。なかでも00年のNHKマイルC(G1)と02年のジャパンCダート(G1)を制した“二刀流”のイーグルカフェは、過去3度にわたりフェブラリーSを使った同年に安田記念に出走しています。

いずれも勝利することは出来ませんでしたが、この挑戦の続きとして息子の光一氏がカフェファラオで安田記念を勝つ事があれば、これはもうドラマですよ。今回の陣営の決断には、05年に亡くなった父・清氏の想いも込められているのではないでしょうか」(同)

ソダシ 撮影:Ruriko.I

 昨年のソダシをはじめ、芝G1馬がダートG1に挑戦するケースは過去に何度も見られるが、逆パターンというのは極めて稀だ。過去にフェブラリーSを制した後に、同年の安田記念を勝利した馬にはアグネスデジタルがいるが、同馬も先にマイルCS(G1)で芝G1を制している。

 カフェファラオが安田記念を勝利すれば、それは競馬史においての大偉業であり「真・二刀流」として新たな伝説を刻むことになるだろう。春G1戦線に新たな楽しみが待っている。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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