JRAコマンドラインは当たり?ハズレ? 毎年恒例「ノーザン1番馬」のデビュー後を振り返る……、近年で最も大成功だったのは

コマンドライン

 クラシック本番も近づき、2歳馬の育成も夏のデビューに向けて熱のこもる時期になってきた。例年この時期になるとあちこちの育成現場から良い動きを見せる期待の若駒たちの評判が流れて来る。

 なかでも10年連続で生産者リーディングを獲得したノーザンファームの評判馬と言えばその期待も他の若駒とは比べ物にならないほど大きいだろう。ノーザンファーム天栄の場長である木實谷雄太氏は、『東スポ競馬』で連載しているコラムで今年の2歳のエースにロードカナロア産駒のスワッグチェーンを挙げた。

 場長が2か月前に北海道へ足を運んだ際、現地のスタッフから「ウチのエースだよ」と言われたのがスワッグチェーンだ。サンデーレーシングの所有馬であり、母は阪神JF(G1)とNHKマイルC(G1)を制した名牝メジャーエンブレムという良血である。すでに美浦の田村康仁厩舎に入厩した。育成は順調で6月の新馬戦を予定しているとのこと。

 上の姉2頭はあまり活躍できなかったが、スワッグチェーンはメジャーエンブレム待望の牡駒であり木實谷場長は「バランスの良さに、すばらしい筋肉量・・・父と母のいい部分を受け継いだ素晴らしい馬体」と大絶賛していた。

 しかし、牧場で絶賛された馬が、競走馬としてデビュー後も前評判通りの活躍をしているのかとなると話は別である。実際、セレクトセールで高額落札された馬が、額面に見合った成績を残せないのが珍しくないのと同様、やはり走ってみないと分からない。

 過去の名馬の話を聞くと、やれノーザンダンサーは貧相で買い手が付かなかっただとか、牝馬二冠のベガは足が曲がっていてクラブ馬にできなかったなど、結果的に幼駒時代の評価から一変した馬は多い。

 馬を見るプロの中のプロであるノーザンファームのスタッフといえど、幼駒の時点で馬の将来を見抜くのは非常に難しいだろう。そこで、歴代の「ノーザンファーム1番馬」がどのような結果であったのか振り返ってみたい。

 直近ではまず昨年デビューしたコマンドラインが1番の評価を受けた馬だった。育成したノーザンファーム早来の木村浩崇厩舎長をして「これまで携わった馬の中でもトップクラス」と言わしめた超大物のディープインパクト牡駒だ。

 デビュー前から国枝調教師は「来年のダービーまでは寝られないな」、調教に騎乗したC.ルメール騎手も「来年のダービーを予約しておきます」と大きな期待を寄せていた逸材である。

 新馬、サウジアラビアRC(G3)を連勝したところまでは、関係者の期待に応える走りを披露したものの、1番人気を背負ったホープフルS(G1)では見せ場なく12着に大敗を喫した。26日の毎日杯(G3)に出走を予定しているが、急落しつつある評価を取り戻すことが出来るだろうか。

 また、2020年には吉田勝己代表が「アドマイヤセプターの18(レガトゥス)、シンハライトの18(セブンサミット)は牧場全体を見渡しても、いい馬と言われたらまずこの2頭ですね」と熱弁していたが、現状の成績は冴えない。

 どちらもモーリス産駒だが、レガトゥスは3勝クラスまで出世し、将来的にG3くらいは勝てる見込みもありそうだが、セブンサミットは1億円の値がついた馬であるが2度の手術を経て未だ未勝利と低迷が続いている。

 2019年デビュー世代で木實谷場長が「潜在能力を発揮できれば、モノ的にはこの馬が一番いい」と語っていたのが2018年の大阪杯(G1)を制したスワーヴリチャードの半妹でディープインパクト産駒のルナシオンだ。

 管理していた藤沢和雄調教師も「今まで管理した牝馬で1番」と期待していたが3勝で引退。引退に際して「レースへの気持ちが切れてしまっています」と藤沢師は説明した。精神的なものが無ければ、能力的にもっと上へ行けたかもしれない。

 2018年の1番馬はサートゥルナーリア。ホープフルSから直行で皐月賞(G1)を制したロードカナロア産駒の名馬である。育成時代からノーザンファームスタッフの林宏樹氏も「独特のオーラを感じる」と太鼓判。新馬戦が始まる前から大器の呼び声が高かった馬だが、デビュー後の成績も前評判に違わぬ実力の持ち主だったといえるだろう。

 こうして振り返ると、期待に応えられなかった馬もいれば、結果を残した馬もいる。とはいえ、生産界最大手の関係者の評価は的確であり、さすがプロといったところだろう。

 今年のノーザンファームの1番馬スワッグチェーンは、関係者の期待に応えることが出来るだろうか。

(文=パッパラー山中)

<著者プロフィール>
 皇帝シンボリルドルフの代表産駒トウカイテイオーの舞うようなフットワークに魅せられて競馬を始める。人生で1番泣いたのは前年の大敗から1年ぶりの復活勝利を決めた1993年の有馬記念(G1)。感動のあまり競馬場で泣いて電車で泣いて家で泣いた。馬券はパドック派。今までで1番「こりゃすんげえ馬体」と思ったのはサクラケイザンオー。

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