JRA天皇賞・春(G1)横山和生「言行不一致」の権利取り失敗に募る不安…違和感拭えなかった「後方ポツン」の父と異なる人馬のリズム

タイトルホルダー

 今週末に行われる伝統の長距離G1、天皇賞・春タイトルホルダーとのコンビで挑む横山和生騎手。父が横山典弘騎手の横山兄弟は、昨年活躍した三男の武史騎手がブレイクするとともに、長男の和生騎手も着実に好成績を積み重ねてきた。

 春G1の主役と目されていた弟がよもやの4連敗を喫したのに対し、兄は5月を待たずに重賞3勝を挙げるキャリアハイの絶好調。2011年のデビューから昨年までの11年間で重賞勝利が3勝だったことを思えば、驚異的なペースといえるだろう。

 昨年の有馬記念(G1)では、エフフォーリアに騎乗する武史騎手から譲り受けるような格好で菊花賞馬とコンビを組んで5着に敗れたものの、コンビ2戦目の日経賞(G2)を勝利し、しっかりと結果を残している。

 乗り替わった当時は「武史がいい」という声も一部で出ていたが、弟はG1連敗でスランプに突入した感もあるだけに、兄の意地を見せるには絶好の条件が揃った。

 ただ、先週のオークストライアル・フローラS(G2)でコンビを組んだホウオウバニラ(牝3、栗東・安田翔伍厩舎)については、少々残念な騎乗内容だったようにも感じる。

 このレースは4番手から差し切ったエリカヴィータが勝利し、2着に逃げたパーソナルハイ、ハナ差の3着に2番手を追走したシンシアウィッシュが入ったように前につけた組が好走する結果だった。

 この日の8R(1勝クラス・芝1600m)を逃げたことのなかったココリホウオウで奇襲を仕掛けて逃げ切り勝ち。続く9R(2勝クラス・芝1800m)では、ゴール前でボーデンを外から強襲して差し切るなど、馬場を完全に把握していたはずだった。

 にもかかわらず、スタートを無難に決めたパートナーが頭を上げるほど強引に下げ、鞍上は後方待機策を選択してしまった。

 道中で折り合いがつかないまま、最後の直線で大外に出されたが7着が精一杯。デビュー戦を3番手、2戦目を2番手という積極策で好走しているホウオウバニラにとって、これまで通りの乗り方なら善戦していた可能性が高い。オークス(G1)の優先出走権の懸かる舞台としては、消極的な作戦だったようにも映った。

 とはいえ、一概に結果論だけを述べても詮無きことであるのは確か。むしろ気になったのは、レース後に出された「言行不一致」のコメントの方だ。

違和感拭えなかった「後方ポツン」の父と異なる人馬のリズム

「調教師とも話をして、前回のレースで感じたイメージを踏まえ、今日は出たなりでリズムを大事にして乗りました」

「調教師とも話をして」という言葉から、後方待機策を指示されていた可能性も考えられるものの、「出たなりでリズムを大事にして」と表現したことには疑問が残る。

 少なくとも行きたがる馬を引っ張って、馬が何度も頭を上げて嫌がっていた姿からは、「出たなりでもリズムよく」でもなかったように思えたのは気のせいだろうか。例えば、父の典弘騎手は時々「後方ポツン」で話題となるが、こちらの場合は馬の行く気に任せた結果であり、無理矢理抑え込んで後ろからの競馬をしている訳ではない。

 この場合、和生騎手の言葉だと「言行不一致」といえるだろう。

 そして、こういった「感覚のズレ」は、G1レースともなると致命的な判断ミスともなりかねない。ここまで10戦4勝のキャリアでスタートから最終コーナーまで先頭でレースをした際は全勝しているタイトルホルダーだが、乗り慣れていないG1の大一番で守りに入るようなら「逃げない」可能性も出てくるかもしれない。

 前走の日経賞を逃げ切ったとはいえ、道中で13秒台のラップが2度出たほどの超スローペースの恩恵にも恵まれた。それでも2着馬とクビ差だったことは、ただ1頭出走していたG1馬としては物足りなさを否めない薄氷の勝利だった。

 この結果を是とするか、それとももっと強気に乗るべきだったのかと考えるかどうかは和生騎手次第。騎手の手腕を問われる長丁場の3200m戦で、どういう作戦を選択してくるだろうか。

 タイトルホルダーと同じくG1馬のオメガパフュームを初コンビのアンタレスS(G3)で勝利に導いた手腕に注目したい。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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