JRA大物馬主が日本ダービーとオークスの「格差」を語る。「とんでもないことが発覚した」200万円の追加登録即断は“魔力”のなせる業?
春の6週連続G1も、間もなく折り返し地点を迎える。今週末のヴィクトリアマイル(G1)が終わると、残すはオークス、日本ダービー、そして安田記念の3レース。オークスの週からは入場者数制限も大幅に緩和され、競馬場にはかつての熱気が戻ってきそうだ。
多くのホースマンにとって最大の目標で憧れのレースがダービーだろう。「ニシノ」「セイウン」の冠名で知られる西山茂行オーナーも、そんなダービーに対する思いを自身のブログに綴っている。
西山氏が11日に投稿した「祭日本ダービーの魔力。」というエントリーには、先日のプリンシパルS(L)を制し、ダービーに向かうセイウンハーデス(牡3歳、栗東・橋口慎介厩舎)についてこう記されている。
日本ダービー出走で急に忙しくなった西山オーナー
「日本ダービー出走権を獲得したら急激にわしの回りが忙しくなった」と、スポーツ紙などから取材の申し込みが殺到していることを明かした西山氏。「個人馬主が日本ダービーに出走馬を持つのは奇跡的な確率です」と、大舞台にたどり着くことの難しさを改めて感じているようだ。
また、西山氏は「セイウンハーデスを応援に行きたいので、馬主席お願いできますか?」など、知人からお願いされることもあるという。もちろん「馬主席はG1観戦の指定席ではないの。その馬の馬主と関係者が愛馬を応援するための席なの」と苦言を呈し、「全部お断りします」とピシャリと言い放った。
西山氏は1週前のオークスにもニシノラブウインクで臨むが、「こちらの取材はなく、席も頼まれません」と、同じクラシックレースでもダービーの注目度の高さを改めて実感。こうした周囲の反応を受け、西山氏は「まさに日本ダービーの魔力ですね」と、独特の言い回しで表現した。
そんな西山氏がダービーに送り込むセイウンハーデスだが、「とんでもないことが発覚した」という。実はシルバーステート産駒の同馬を西山氏は当初マイラーと判断しており、未勝利戦を勝利した後もクラシック登録をしていなかったのだ。
「5大クラシックレースには2歳秋、3歳1月、そしてレース2週前の3回にわたって特別登録があります。1回目が1万円、2回目が3万円と安価なのですが、3回目は200万円まで一気に跳ね上がります。
2回目までの登録を見送っていた西山オーナーが、セイウンハーデスをダービーに出走させるためには200万円の追加登録料の支払いが必要となります」(競馬誌ライター)
いくら大物個人馬主の西山氏とはいえ、200万円は決して小さくない額。それでも「もちろん払いますよ」と即断即決。「ある意味嬉しい誤算でした。東京馬主協会の副会長ですからオークス、ダービーに出走馬がないと面白くありません」と続けた。
「西山オーナーは、これまでクラシックを3つ勝っています。先代の正行氏名義のニシノフラワーが桜花賞、そして西山牧場名義のセイウンスカイが皐月賞と菊花賞をそれぞれ制覇しました。ところが、オークスとダービーにはまだ縁がありません。
ブログにも書いていましたが、オークス挑戦は今回が16回目、ダービーは11回目だとか。これだけの頭数を送り込んでいるのは、素直にすごいことだと思います」(同)
セイウンハーデスとニシノラブウインクはともに別路線組で、あくまでも伏兵扱い。厳しい戦いが予想されるが、出走するからには当然チャンスはある。ダービーの1着賞金は2億円。200万円の出費が100倍になって返ってくる可能性も……。やはり馬主は住む世界が違うのだ。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。