JRAキタサンブラック産駒「遅れてきた大物候補」が衝撃デビュー戦V! イクイノックスに並ぶ世代2位の好タイム「順調なら大舞台に立てた」の声も
もしかすると、とてつもない能力を秘めているかもしれない。
14日、東京競馬場の4Rに行われた牝馬限定・3歳未勝利は、初出走だったキタサンブラック産駒の4番人気ビーナスローズ(牝3歳、栗東・清水久詞厩舎)が後方追走から直線差し切って優勝。既走馬を相手にデビュー戦でVを飾った。
13頭によって争われた芝1800mの一戦。スタートで1馬身ほど出遅れたビーナスローズとD.レーン騎手は、後方4番手からの競馬に。口をやや割り加減だったが、向正面に入ると折り合いが付いたようで、道中は外目をスムーズに追走する。
C.ルメール騎手が乗る1番人気ジュエルラビシアが、逃げたクロシンジュを積極的に追いかけたことで、1000m通過は58秒9という未勝利戦としては速いペースに。お誂え向きの流れになったビーナスローズは外々を回りながら最後の直線へと向かう。
直線に入ると失速気味のジュエルラビシアに代わって2番人気ルージュアルルが先頭に立つも、離れた外からはビーナスローズも懸命に脚を伸ばす。最後は2頭のマッチレースとなったが、レーン騎手のステッキに応えたビーナスローズがねじ伏せるようにクビ差捕えて勝利した。
勝ち時計は世代No.2という破格
「3着までは6馬身の差が開いており、非常に見応えのあるマッチレースとなりました。ビーナスローズは多少、流れが向いたこともあると思いますが、それでも初出走だったことを考えると優秀な競馬ぶりだったと思います。
なお勝ちタイムの1分46秒2は、東京・芝1800mで行われた現3歳世代のレースにおいて、ドゥラドーレスがセントポーリア賞(1勝クラス)で記録した1分45秒7に次ぐ2位タイの好時計。イクイノックスが勝った昨年の東京スポーツ杯2歳S(G2)と同タイムになります」(競馬誌ライター)
着目すべきは、このタイムをビーナスローズが初出走かつ稍重の馬場で記録したという点だろう。また、上がり3ハロンもメンバー中唯一の34秒台となる34秒3をマーク、2位ルージュアルルのそれを0秒7も上回っていた。
レース後のSNSやネット掲示板には「これはかなり強そう」「ゴール前の脚に衝撃を受けた」とのコメントが寄せられ、「無事なら来週開催されるオークス(G1)の大舞台にも立てたのでは」といった声も上がっていた。
「所有するローレルクラブの公式Twitterによると、同馬は骨の疾患であるボーンシストの手術を受けた経験があるみたいですね。デビューが3歳5月まで延びたのは、故障で順調さを欠いたことも理由の1つでしょうか」(同)
残念ながら樫の舞台には間に合わなかったが、順調にいけば、秋には三冠レースの最終戦となる秋華賞(G1)で面白い存在になれるかもしれない。
ちなみに、牡馬では2014年の日本ダービー(G1)前日にデビューを迎えたトーホウジャッカルが、その年の菊花賞(G1)を制覇したという例も存在する。
本馬の近親には6歳で宝塚記念(G1)を制したアーネストリーや、5歳時の天皇賞・秋(G1)でシンボリルドルフを破る大金星を挙げたギャロップダイナなどが名を連ねる。成長力に優れた血統であることも、今後の飛躍を後押ししてくれそうだ。
「とてもいいレースができました。これを使ってメンタルも肉体も上積みがあるので楽しみです」
レース後、騎乗したレーン騎手もビーナスローズの将来性を高評価するコメントを残した。遅れてきたキタサンブラック産駒の大物候補を長い目で見守ってみたい。
(文=冨樫某)
<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。