JRAダノン軍団に「クラシックの呪縛」再び!? 日本ダービー(G1)ダノンベルーガ“秀逸”追い切りでよぎる「レコードV」骨折の悪夢
26日午後、日本ダービー(G1)の枠順が確定し、上位人気が予想される“4強”は揃って外目の枠に収まった。
4頭の中で最も手痛い18番枠を引き当てたのはイクイノックスだ。鞍上を務めるC.ルメール騎手は先週のオークス(G1)を同じ大外枠で勝利しているが、当日は外差し馬場だった。BコースからCコースに替わる今週は、内枠有利になるとみられているため、マイナス材料となりそうだ。
一方、4強の中では最も内目の12番枠を引いたのは、川田将雅騎手が騎乗するダノンベルーガ(牡3歳、美浦・堀宣行厩舎)。前走の皐月賞(G1)は4着に敗れたが、終始荒れたインを走り、外に出せずじまいの結果だった。今回は枠の並びも手伝って、ダノンベルーガが1番人気に支持される可能性もあるだろう。
ダノンベルーガ“秀逸”追い切りでよぎる「レコードV」骨折の悪夢
ダノンベルーガを推す要素は他にもある。中間の動きがとにかく良かったことだ。圧巻だったのは美浦南Wでの1週前追い切り。川田騎手を背に単走で追われ、6ハロン77.9-11.0という出色の時計をマークした。
「時計はもちろんですが、気迫満点のパワフルな動きは『すごい』の一言でしたね。ダービー制覇へ、陣営の並々ならぬ意欲を感じました。最終追い切りも理想的な加速ラップを踏んで、文句のつけようがない状態だと思います。堀師も『皐月賞前よりも一段階いい仕上がりで出られる』とコメントしていますよ」(競馬誌ライター)
スポーツ各紙の調教評価を見ても、「秀逸」「力強い」「段違い」など、称賛のワードが並ぶ。まさに究極の仕上げで臨むことになるであろうダノンベルーガだが、不安要素もないわけではない。
「これまで国内G1を9勝しているダノン軍団こと『ダノックス』ですが、五大クラシックは未勝利なんです。これまでのべ18頭が挑戦してきましたが、3年前のダービーでダノンキングリーが2着したのが最高着順。個人的にはこれをダノン軍団『クラシックの呪縛』と呼んでいます。ダノンキングリー以外の馬でもチャンスは何度かありましたが、勝利には至っていません」(別のライター)
「ダノン軍団」にとって初めてのクラシック挑戦は09年までさかのぼる。この年の桜花賞(G1)には国枝栄厩舎のダノンベルベールが3番人気で臨んだが、同世代にはブエナビスタという女傑がいた。
それでも何とか抗おうと国枝師は究極の仕上げで大一番に臨んだが、当日は阪神への初めての長距離輸送もあってか、デビュー以来最低馬体重に。これも響いたのか、初めての馬券外となる8着に敗れた。
翌10年にはNHKマイルC(G1)を制したダノンシャンティで初のダービーに挑戦。下馬評では上位人気の一角を占めるはずだったが、枠順確定後に骨折が判明。無念の出走取消となった。
この時のダノンシャンティはNHKマイルCを4角16番手から直線一気の差し切り勝ち。しかも日本レコードを叩き出しており、その反動があったとも言われた。
ダノン軍団は、その後もダノンプレミアムやダノンファンタジー、前出のダノンキングリー、ダノンザキッドなどクラシックで上位人気の期待に応えることはできていない。
今年こそ究極の仕上げでクラシック制覇の悲願を遂げることはできるのか、それとも究極の仕上げだからこそ逃すのか……。クラシックの呪縛を解けるかどうかはダノンベルーガに懸かっている。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。