JRAジオグリフ、イクイノックス、ドウデュース、ダノンベルーガの4強で思い出される2014年の大波乱……今年の「大穴」マイネルフロスト2世はこの馬?
今週は2019年に日本で生産されたサラブレッド7522頭の頂点を決める伝統の一戦、第89回東京優駿(日本ダービー)(G1)が開催される。
優駿牝馬(オークス)(G1)のスターズオンアースに続き、皐月賞(G1)を制したジオグリフが2冠を達成するのか。それとも皐月賞2着のイクイノックスを始め、ライバルたちが逆転制覇を成し遂げるのか。
注目はやはり皐月賞の上位4頭、すなわちジオグリフ、イクイノックス、ドウデュース、ダノンベルーガだろう。この4頭を今年のダービー4強とする向きもある。
確かにこれまでの実績、そして福永祐一、C.ルメール、武豊、川田将雅といった鞍上を踏まえても、この4頭がダービーで好走する可能性は非常に高い。だが過去のダービーの4強対決はどんなレースだったのか振り返ってみると、なかなか興味深いデータが見つかった。
2000年以降の日本ダービーで、単勝が一桁台の馬が4頭いたレースを4強対決と定義する。つまり上位1番人気から4番人気が単勝10番未満で、5番人気は10倍以上という条件に当てはまるケースである。条件を満たすレースは2020年以降で合計7回行われた。
■2000年以降の日本ダービー4強対決
2016年
1番人気 ディーマジェスティ⇒3着
2番人気 サトノダイヤモンド⇒2着
3番人気 マカヒキ⇒1着
4番人気 リオンディーズ⇒5着
2014年
1番人気 イスラボニータ⇒2着
2番人気 トゥザワールド⇒5着
3番人気 ワンアンドオンリー⇒1着
4番人気 レッドリヴェール⇒12着
※3着⇒マイネルフロスト(12番人気)
2013年
1番人気 キズナ⇒1着
2番人気 ロゴタイプ⇒5着
3番人気 エピファネイア⇒2着
4番人気 コディーノ⇒9着
※3着⇒アポロソニック(8番人気)
2011年
1番人気 オルフェーヴル⇒1着
2番人気 サダムパテック⇒7着
3番人気 デボネア⇒12着
4番人気 ナカヤマナイト⇒4着
※2着⇒ウインバリアシオン(10番人気)
※3着⇒ベルシャザール(8番人気)
2004年
1番人気 キングカメハメハ⇒1着
2番人気 コスモバルク⇒8着
3番人気 ハイアーゲーム⇒3着
4番人気 ダイワメジャー⇒6着
※2着⇒ハーツクライ(5番人気)
2003年
1番人気 ネオユニヴァース⇒1着
2番人気 サクラプレジデント⇒7着
3番人気 ゼンノロブロイ⇒2着
4番人気 サイレントディール⇒4着
※3着⇒ザッツザプレンティ(7番人気)
2000年
1番人気 エアシャカール⇒2着
2番人気 ダイタクリーヴァ⇒12着
3番人気 アグネスフライト⇒1着
4番人気 カーネギーダイアン⇒7着
※3着⇒アタラクシア(6番人気)
4強対決の傾向は、4頭のいずれかが勝利していること。つまり4強以外に1着になる馬はいないので、3連単やWIN5は絞りやすくなる。そしてこの7回の中で4強による決着、つまり4頭のうち3頭が1・2・3着を独占したのは、2016年のマカヒキ、サトノダイヤモンド、ディーマジェスティのみであった。
それ以外の6回に関しては、4強のうちどれかが3着以内に入るものの、5番人気以下の人気薄馬が馬券に絡み少なからず波乱となっている。特に2014年に関して言えば、12番人気のマイネルフロストが3着に入り3連単は10万円馬券が飛び出しているのだ。やはり4強対決は一筋縄とはいかず、波乱含みと言えるだろう。
問題は5番人気以下の人気薄で、好走する馬を発掘する方法である。
過去の傾向から見ると5番人気以下であっても、それなりの実力馬であることがわかる。12番人気で3着に好走したマイネルフロストでも、前々走に毎日杯(G3)1着という実力馬でもあった。そういった馬が人気を落として激走しているのだから、今年も視野を広げてチェックしたい。
すると今年の出走予定馬から、過去に好走した人気薄馬と共通する要素を持った馬が見つかった。それが「アスクワイルドモア」である。
激走の条件は【前走と同じ騎手が騎乗、2歳12月以降の重賞かオープンの勝利実績、前走一桁着順、前走重賞、前走2000m以上、前3走以内に4着以下の敗退歴】で、条件に合致するのがアスクワイルドモアなのだ。
同馬は父が日本ダービー馬のキズナ、調教師は昨年シャフリヤールで勝利した藤原英昭厩舎、皐月賞をパスして挑んだ前走の京都新聞杯(G2)でレコード勝ちという馬。父キズナは京都新聞杯と日本ダービーを連勝しているだけに、親子制覇の期待が高まる。1992年以降で過去最多の8勝と好結果を残している1枠を引いた運も加わり、ここは注目の一頭だ。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。