JRA武豊「貫禄勝ち」の裏で新人騎手が大失態、神騎乗のレジェンドと明暗…「騎乗停止」で制裁リーディング上位にランクイン
11日に函館競馬場で行われた7R(3歳上・1勝クラス)は、武豊騎手が騎乗したスワヤンブナートが1番人気に応えて勝利した。2月のデビューから3連敗していたものの、前走は積極策の逃げで初勝利を挙げ、今回は2番手から抜け出しての連勝。主戦を任されている武豊騎手と相性の良さも目立った。
数字上は1コーナーから4コーナーまで2-2-2-2の通過順だが、実際のレースは道中で次々に順位が入れ替わる何かと忙しいレース展開。それでも周りの動きに惑わされることなく、“マイペース”を貫いたレジェンドの巧みな手綱捌きは、まさに貫禄勝ちといえるものだった。
14頭立てで争われた芝2000mのレース。好スタートを決めた武豊騎手とスワヤンブナートだが、慌てず騒がずの4番手を追走する。押し出されるようにハナを奪ったウインアステロイドだが、鞍上の小林凌大騎手は行く気がない素振り。
それを見た横山和生騎手のフィレンツェが替わって先頭に立つ積極策。そのまま隊列が落ち着くかに見えたのも束の間、どうぞどうぞの超スローを嫌った浜中俊騎手のルーパステソーロが、後方12番手から一気に先頭へと躍り出た。
そんな展開でも「何もしない」を“して”いた 武豊騎手の判断は、見た目とは裏腹に冴えに冴えていたといえるだろう。
行きたい馬がいれば先に行かせ、行かないなら自身が先に行くという駆け引きを繰り返して終始2番手をキープ。前の馬をいつでも捕まえられる射程圏に入れるポジションを譲らなかった。最後の直線で粘り込みを図るルーパステソーロを図ったように差し切ったのだから恐れ入る。
さも当たり前のように勝ってしまったが、もし武豊騎手以外が手綱を取っていたなら、これほどスマートなレースが出来ていたかどうかは分からない。肉体的な衰えを避けられない50代を迎えても、日本ダービー最多6勝を誇るレジェンドは、鮮やか過ぎる手綱捌きでファンを魅了した。
武豊「貫禄勝ち」の裏で新人騎手が大失態
そんなお手本騎乗の裏で、新人騎手ゆえの若さが目立ってしまったのが、5着に敗れた4番人気デルマアシュラに騎乗した鷲頭虎太騎手である。
「3枠3番から好スタートを決めたこともあり、そのまま位置を主張することも出来ましたが、結局ウインアステロイドにハナを譲って下げたのが致命的でした。そのままスローに落とされて行き場をなくしたまま、前の馬が邪魔になってズルズルと後ろまで下げることになりました。
残り800mを切った辺りから慌てて外に進路を探したものの、勝負所で各馬が一斉に上がって行くタイミング。最後の直線に入っても先行馬群が横一線に広がったため、半ば強引にタックルする格好でスペースを確保しましたが、やはりお咎めなしという訳にはいきませんでしたね」(競馬記者)
レース後に発表された裁決の結果、鷲頭騎手には2022年6月25日から同年7月3日まで9日間(開催日4日間を含む)の騎乗停止処分が下された。対象となったのは、デルマアシュラの斜行で玉突き事故のような格好となり、ザレストノーウェアとタケルジャックの進路が狭くなったことについてである。
経験の浅い新人騎手とはいえ、これは騎乗馬の問題ではなく、騎手が主導しての危険騎乗なのだから鷲頭騎手も弁解の余地がないだろう。
ただ、騎乗停止こそ初めてでも、これまで鷲頭騎手に何度か危ういシーンがあったことも事実。デビュー当初も度々過怠金を科されていたように、新人騎手ながら制裁点のリーディングで上位にランクインしていることはいただけない。
今回の反省を生かしての失地回復に期待したいところだ。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。