黄金旅程が築いた金字塔、産駒が狙う「最後の偉業」

ステイフーリッシュ 撮影:Ruriko.I

 宝塚記念(G1)で9着だったステイフーリッシュ(牡7歳、栗東・矢作芳人厩舎)が、以前から登録をしていた今秋の凱旋門賞(G1)に挑戦することが12日に判明した。8月末に行われるドーヴィル大賞典(G2)をステップに大舞台へと挑む方針のようだ。

 ステイフーリッシュは3歳時に京都新聞杯(G2)で勝利したものの、その後は6歳となった昨年まで1度も勝利を挙げることができず。一方でG2・G3のレースでは抜群の安定感を発揮しており、コンスタントに2、3着と馬券に絡む活躍を見せていた。勝利こそ挙げられないながらも堅実に善戦するその姿は、どこか父・ステイゴールドに似た部分が感じられる。

 勝ち切れない日々が長く続いたステイフーリッシュであったが、7歳を迎えた今春に大きな転機を迎えることとなる。今春は中東遠征を敢行すると、2月にはサウジアラビアのレッドシーTH(G3)で約4年ぶりの重賞制覇を達成。勢いそのままに翌月にはドバイゴールドC(G2)を勝利し重賞2連勝。海外挑戦でその能力が花開き、父・ステイゴールドさながらの“覚醒”を果たした。

 今年の凱旋門賞には日本から他にタイトルホルダー、ドウデュース、ディープボンドの3頭も出走予定。ステイフーリッシュは実績の面ではこの3頭の陰に隠れてしまうが、洋芝での実績に関しては一日の長がある。また、凱旋門賞において古馬牡馬は59.5kgという日本勢にとっては未知の重斤量を負うが、ステイフーリッシュはレッドシーTHで斤量60kgを既に克服している点も心強い。

 加えてステイゴールド産駒はナカヤマフェスタ、オルフェーヴルといった凱旋門賞での好走例もあることから、ステイフーリッシュも凱旋門賞に対する血統的な適性は高いといえる。日本での注目度とは裏腹に、大仕事をやってのける可能性は十分にあるはずだ。

 思い返せばステイゴールド産駒は、これまでも数々の「金字塔」と言うべき様々な記録を打ち立ててきた。

オルフェーヴル、ゴールドシップ…金字塔の名馬ズラリ

 

 オルフェーヴルはクラシック3冠を達成し、ゴールドシップはG1・6勝に阪神大賞典(G2)では史上5頭目の平地同一重賞3連覇。さらに障害界の絶対王者・オジュウチョウサンは中山GJ(G1)の5連覇を含む障害G1・9勝という大記録を打ち立てている。

 産駒全体で見ても、今春の中山GJにおけるオジュウチョウサンの勝利によって14年連続でG1制覇を達成。これはサンデーサイレンスに並ぶ歴代1位タイとなる偉大な記録である。

 その他にもドリームジャーニー、香港を席巻したウインブライト、短距離戦線で活躍したインディチャンプなど個性豊かな産駒をステイゴールドは輩出してきた。

 そんなステイゴールド産駒であるが、実は残されたJRAでの現役産駒はごくわずかとなっている。現6歳世代がラストクロップではあるのだが、この世代で残された産駒は1頭のみで既に現役を引退済み。ステイフーリッシュを含む現7歳世代が実質的なラストクロップである。

 長年に渡り競馬界を沸かせたステイゴールド産駒がターフから姿を消す日は目前に迫っている。数々の「金字塔」を打ち立てたステイゴールド産駒の“最後の偉業”を成し遂げるべく、ステイフーリッシュは凱旋門賞に挑むこととなる。

 国内でG1はおろか、古馬になってからは重賞を勝利することも叶わなかったステイフーリッシュ。実績だけを見れば、凱旋門賞で好走を期待するのは荷が重いようにも思える。

 だがステイフーリッシュの馬名の由来はAppleの創業者、スティーブ・ジョブズ氏のスピーチの一節であり、その意味は「常識に囚われるな」だ。先述したように適性や経験を鑑みれば凱旋門賞でも通用する下地はある。名前の通り常識に囚われない、ステイフーリッシュの大金星に期待をしたい。

(文=エビせんべい佐藤)

<著者プロフィール>

 98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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