今年は「初物尽くし」がトレンド、今週の注目騎手は
「(重賞初制覇について)時間はかかりましたが、フリーになって1年目で心機一転、何とか頑張りたいというところで勝てたのは大きいです」
そう語ったのは、先月31日に行われたアイビスSD(G3)を、7番人気ビリーバーで勝利した杉原誠人騎手だ。
コメントにもあるように、所属していた藤沢和雄厩舎が2月に解散したことで、3月からはフリーに転向した。デビュー12年目にしてようやく掴んだ重賞初制覇は、これまで味わったことのない格別なものだったに違いない。
今年は「初物尽くし」がトレンド
そして今年の重賞では、いわゆる騎手界の「初物尽くし」が続いているのも事実。
2月には、4年目の岩田望来騎手が京都牝馬S(G3)をロータスランドで重賞初制覇。3月の高松宮記念(G1)では、16年目の丸田恭介騎手がナランフレグでG1初制覇を決めている。
また同月に7年目の荻野極騎手がオーシャンS(G3)をジャンダルムで重賞初制覇を達成すると、5月の天皇賞・春(G1)は12年目の横山和生騎手がタイトルホルダーでG1初制覇を飾った。
この流れはさらに続き、先月のCBC賞(G3)では新人の今村聖奈騎手がテイエムスパーダとのコンビで重賞初騎乗・初制覇をあげるなど、近年稀に見る、騎手たちの記念すべき重賞初勝利が話題となっている。
そんな波に乗りたいのは、いまだ重賞勝ちの無い騎手だろう。
今週末に行われる重賞で最も初制覇に近い存在と言えるのが、エルムS(G3)でブラッティーキッドに騎乗する水口優也騎手ではないだろうか。
2日現在、『netkeiba.com』の単勝予想オッズで3番人気となっている注目馬であり、13年目を迎えた苦労人も力が入るだろう。
水口騎手は、ここまで計24回の重賞に挑戦したものの、2着が2回、3着が2回と戴冠には至っていない。
一番惜しかったレースといえば、2017年のCBC賞(G3)だろうか。セカンドテーブルと臨んだ一戦だった。
「とにかく惜しい…勝つ時のレースは出来ました」
レース後の開口一番、悔しさを滲ませたのも無理はなかった。13番人気と低評価ながらレースでは果敢に先行し、直線では逃げたアクティブミノルを交わし初戴冠は目の前と思われた。しかし、無情にも最後方にいたシャイニングレイの強襲に合いハナ差2着に惜敗してしまう。
その後も、同コンビで翌年のCBC賞で3着、昨年の函館記念(G3)をアイスバブルで2着と見せ場は作るものの、あと一歩届かない状況が続いている。
ただ、今回ばかりはこれまでと期待感がまるで違うことも確か。
過去24回の重賞挑戦で3番人気以内の上位人気馬に騎乗のなかった水口騎手だが、ブラッティーキッドはこれまでに比べて本命級といえる存在。地方から合わせて8連勝中と勢いもある。同じく人気を集めそうなオメガレインボーやウェルドーンと比較しても、チャンスは十分と言えるだろう。
「まだオープンに上がったばかりでチャレンジャー。でも、自信を持って乗れる成績ではきていますね」
先日、『スポーツ報知』の取材にそう応じた水口騎手。今年の重賞戦線で起こっている「初物尽くし」の波に乗って、今度こそ勝利を掴み取ることは出来るだろうか。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?