横山典弘「完璧リハ」も突如途絶えた菊への道。セントライト記念(G2)3年前の忘れ物獲りに雪辱へ燃える前哨戦
「秋初戦としては言うことがありません」
今から遡ること3年前のセントライト記念(G2)。1番人気リオンリオンを勝利に導いた横山典弘騎手はそう語った。
春にはトライアルレースの青葉賞(G2)を制し、さあ日本ダービー(G1)へというところで、主戦の横山典騎手が1週前にまさかの騎乗停止処分に……。肝心な場面で鞍上交代を余儀なくされた。
その後、三男の横山武史騎手が急遽代役を務めることになったものの、ダービーはこれが初騎乗。多くの騎手が特別と語るレースへの初参戦に緊張もあっただろうか、前半1000m通過57秒8のハイペースの単騎逃げに打って出るも、最後の直線で力尽き15着に敗れた。
そんな惨敗からの雪辱を期すべく、再び自身に手綱の戻った横山典騎手としても、菊花賞(G1)へ向け仕切り直しの一戦を制したことで手応えは十分。前哨戦で完璧なリハーサルを終え、「今度こそは自らが跨り本番へ」という強い思いがあったはずだ。
「完璧リハ」も突如途絶えた菊への道
ところが、不幸にもクラシック参戦はまたしても幻へと消える。
なんとレース後に左前脚浅屈腱炎を発症したリオンリオンが、菊花賞を断念することになってしまったのだ。さらに、そのまま復帰することなく昨年に引退を余儀なくされた。
あれから3年の年月を経て、リオンリオンを所有していた寺田千代乃オーナーとのコンビで、再び横山典騎手に菊花賞制覇を狙うパートナーが現れた。その馬は、今週末行われるセントライト記念に出走予定のマテンロウスカイ(牡3、栗東・松永幹夫厩舎)である。
まだ1勝クラスを勝ったばかりとはいえ、過去7戦して全て3着内と安定感が光るマテンロウスカイ。4走前のあずさ賞(3歳1勝クラス)では、同じくセントライト記念に出走予定で人気を集めそうなガイアフォース(2着)を相手に、コンマ1秒差と迫る3着に好走した実力馬だ。
前走は単勝1.6倍の断然人気に支持され、2着に2馬身半差をつける完勝を決めており、ひと夏を越してよりパワーアップした印象がある。
先日には、管理する松永幹調教師が『東京スポーツ』の取材に「持っている能力はかなり高い」「ここで勝ち負けできてもおかしくない」と強気なコメントを残していたことからも、その能力の高さに対する自信が窺える。
また「マテンロウ」の冠名で知られる寺田オーナーとは、上述したリオンリオンを含め阪神牝馬S(G2)を制したミスパンテールなど、以前から横山典騎手とのコンビで度々重賞を制覇している間柄。オーナーから絶大な信頼を得ていることは間違いない。
とはいえ、コンビでのG1勝利にはあと一歩届いていないのも事実だ。
今年はシンザン記念(G3)を制したマテンロウオリオンでNHKマイルC(G1)に臨むが惜しくも2着。きさらぎ賞(G3)を制したマテンロウレオでも春の2冠に挑んだが、いずれも二桁着順に敗れている。
そういった背景からも、懇意にする寺田オーナーとのG1初制覇へ向けて、ここは最低でも権利取りが求められる舞台。3年前リオンリオンと果たせなかった菊花賞制覇へ、鍵を握る重要な一戦となるだろう。