【スプリンターズS(G1)展望】大本命メイケイエールに浮上した「不安材料」…53kgナムラクレアとG1ホース2頭にもチャンスあり!?
いよいよ秋のG1戦線が幕を開ける。10月2日、中山競馬場では電撃の6ハロン戦、スプリンターズS(G1)が行われる。
今年の主役は、シラユキヒメ一族ながら鹿毛に生まれたメイケイエール(牝4歳、栗東・武英智厩舎)で間違いないだろう。
これまで6つの重賞タイトルを手中に収めているメイケイエールだが、G1では4戦全敗。5度目の挑戦で悲願のG1制覇を狙う。
G1では4着が最高着順のメイケイエールだが、前走・セントウルS(G2)の内容から、ここでは断然の1番人気が濃厚。前半3ハロン32秒5のハイペースを5番手追走から直線早めに抜け出し、上がり最速の末脚を繰り出した内容は圧巻だった。
課題だった折り合い面も、池添謙一騎手が「どちらかと言えば、勝負所で少し動かしていかなければいけないぐらいの追走だった」と振り返ったように、ひと夏を越して、ほぼ解消されたといっていいだろう。
ゲートが開いてからの走りは、まさに優等生そのものだったが、馬場入場の際に若干テンションが上がったのと、ゲート入りに時間がかかった2つは本番に向けて覚えておきたい。
484kgの過去最高馬体重も、池添騎手は「成長分」と断言。気性面、馬体面ともにまさに今が充実期なのは間違いない。
そんなメイケイエールだが、唯一気掛かりなのが高速馬場をレコードで駆けた前走の反動だ。そこから中2週で中山への長距離輸送も控えている。
24日の実質1週前追い切りは、栗東坂路で4ハロン49秒4の自己ベスト時計を更新。武英師は『スポーツ報知』の取材に「1回使って、明らかに全部が上向いています」というコメントとともに「時計が速すぎましたね」とも。最終追い切りでも想定以上の時計を出してしまわないか注意しておきたい。
打倒メイケイエールの筆頭はナムラクレア(牝3歳、栗東・長谷川浩大厩舎)だろう。
桜花賞(G1)3着後はスプリント路線に専念。古馬相手にスプリント重賞でも中身の濃い競馬を見せている。
特にパフォーマンスが際立ったのは2走前の函館SS(G3)だ。道中は好位3番手を進むと、直線で楽々と抜け出しての完勝劇。斤量(50kg)に恵まれた面もあったが、3歳牝馬とは思えぬセンスと直線での伸び脚を見せつけた。
その後は重賞連勝を狙って2か月後の北九州記念(G3)へ。ここでは一気に3kg増の53kgを背負ったが、前走に続き1番人気に支持された。
この時は先行策を取らず、中団やや後方からの競馬。直線入り口で前が壁になる不利もあったが、馬群を縫うように鋭伸してきた。最後は内をすくったボンボヤージを捉えることができず、先に抜け出していたタイセイビジョンにもクビ差届かずの3着に終わっている。
浜中俊騎手はレース後「負けてはいけないレースでしたが、全て自分の責任です」と反省のコメント。レース内容から力負けでないことは明白だ。むしろ、今回と同じ53kgを背負って勝ちに等しい競馬ができたのは大きな収穫といえるだろう。
浜中騎手といえば、ナムラクレアの父ミッキーアイルとのコンビで2度スプリンターズSに挑んだが、ともに惜敗した過去もある。父のリベンジをここで遂げることはできるか。
メイケイエールとナムラクレアの牝馬2頭を追いかけるのは、安田記念(G1)から約4か月ぶりのレースとなるG1ホース2頭だ。
昨年のNHKマイルC(G1)覇者シュネルマイスター(牡4歳、美浦・手塚貴久厩舎)は、これまで国内に限れば8戦全て馬券圏内という堅実派。デビューからマイル~1800mを中心に使われてきたが、ここで初の6ハロン戦に矛先を向けてきた。
3歳春には弥生賞(G2)2着、同年秋には毎日王冠(G2)を制覇するなど、本質的にはもう少し距離があった方がいいのは疑う余地がない。あのグランアレグリアですら、初スプリントだった高松宮記念(G1)では2着(3位入線)に敗れているように、初距離でペースに戸惑うか、行き脚がつかず後方からの競馬になる可能性は高いだろう。
秋の大目標は、あくまでも昨年2着のマイルCS(G1)。そういう点でも秋初戦を万全な仕上げで臨むかどうかは微妙なところだ。鞍上がC.ルメール騎手から今年重賞ではサッパリの横山武史騎手に乗り替わるのも不安材料の一つといえる。
もちろん現役屈指の実力馬だけにあっさりこなしても不思議はないが、少なくない疑問符を吹き飛ばす走りを見せてくれるかに注視したい。
もう1頭のG1ホースは、今年春のスプリント王者ナランフレグ(牡6歳、美浦・宗像義忠厩舎)だ。
3歳暮れにオープンに昇級したナランフレグ。古馬になってからはなかなか勝てずにいたが、昨年暮れに2年ぶり勝利を飾ると、今年に入ってからシルクロードS(G3)3着、オーシャンS(G3)2着と堅実に上位争いを演じるようになった。
8番人気で迎えた高松宮記念は後方で脚をためると、直線で一か八かのイン突き。狭いスペースを縫うように抜け出すと、最後は5着馬まで0秒1差の大混戦を制した。
その後は適鞍がなかったため、芝では初めてとなる1600mの安田記念へ。結果は9着に敗れたが、勝ったソングラインと0秒4差なら健闘したといえるだろう。
この夏は放牧で英気を養い、8月中旬に美浦に帰厩。約4か月ぶりの復帰戦を迎えるが、中間は坂路を中心に入念に乗り込まれており、力は出せそう。
最終追い切りで高松宮記念の時の状態まで仕上げることができれば、春秋スプリント制覇も決して夢ではない。
おそらく、ここまで名前を挙げた4頭が4番人気までに支持されるとみられる今年のスプリンターズS。5番手以下の馬も枠や展開、馬場次第では一角を崩すチャンスもあるだろう。
ナムラクレアと同じ3歳馬のウインマーベル(牡3歳、美浦・深山雅史厩舎)とテイエムスパーダ(牝3歳、栗東・五十嵐忠男厩舎)も古馬相手に結果を出していて、将来的にも楽しみな存在だ。
3歳馬ながら、すでに12戦と経験豊富なウインマーベルは、前走のキーンランドC(G3)で古馬と初対戦で、2着に好走した。6ハロン戦に限定すれば、これまで8戦して「3-2-3-0」と崩れておらず、好調の松山弘平騎手を背に上位に食い込む可能性は十分ありそうだ。
テイエムスパーダは今村聖奈騎手を背にCBC賞(G3)を制覇し、大きな話題を振りまいた。続く北九州記念は主戦の国分恭介騎手に手が戻って7着。これは斤量が48kgから一気に3kg増えた影響もあったか。
今回さらに2kg重くなる斤量53kgがカギとなるが、今回は同脚質の馬が不在。競りかけられることなく、マイペースの逃げに持ち込める可能性は高そうだ。
2~3歳時に重賞を2勝しているタイセイビジョン(牡5歳、栗東・西村真幸厩舎)は、近走その末脚に磨きがかかっている。約2年半、勝ち星から遠ざかっているのも事実だが、展開次第で上位争いに顔を出してくるだろう。
この他には、キーンランドCで重賞初制覇を飾ったヴェントヴォーチェ(牡5歳、栗東・牧浦充徳厩舎)、今年2月の阪急杯(G3)など短距離重賞3勝の実績馬、ダイアトニック(牡7歳、栗東・安田隆行厩舎)などの伏兵もスタンバイしている。
今年のスプリンターズSはメイケイエールの1強か、それともナムラクレア、シュネルマイスター、ナランフレグとの4強になるのか、はたまた人気薄の激走はあるのか。注目される秋のスプリント王決定戦は10月2日、15時40分にファンファーレが鳴り響く。