JRA福永祐一「G1勝てる」安藤勝己「走ってくる」新馬戦で2冠女王スターズオンアースに快勝した大器が再始動V!
24日、中京7R(1勝クラス・芝1600m)でルージュスティリア(牝3歳、栗東・藤原英昭厩舎)が勝利した。
気性に不安のある同馬は、この日も返し馬でかなり気負った様子を見せていた。それでもレースでは何とか折り合って直線を迎えると、一度は完全に抜け出した2着馬をゴール前でクビ差捉え、新馬戦以来の2勝目を手にしている。
しかしこの馬の素質を考えると、1勝クラスで走っている現状は陣営も不本意に感じているはずだ。
彼女がデビューしたのは昨年の8月。追い切りに騎乗した福永祐一騎手が「G1を勝てると思う」と絶賛したことで、初戦の単勝は1.4倍と大きく売れた。
新馬戦で2冠女王スターズオンアースに快勝
レースでは緩い流れを外から伸び、上がり3ハロン32.7秒の末脚で瞬発力勝負を制した。その時の2着馬で同じく32秒台の上がりを使ったのが、後の2冠牝馬スターズオンアースである。
鮮やかなデビュー勝ちを決めたルージュスティリアだったが、新馬戦の後は脚部不安で休養が長引き、ようやく復帰できたのは今年3月のチューリップ賞(G2)だった。伏兵扱いの5番人気にとどまり、着順も6着に終わったが、その内容はこの馬の規格外なスケールを感じさせるものであった。
最悪のトラブルが発生したのはレース冒頭。ゲートで立ち上がってしまったルージュスティリアはスタートで1秒近くロスしてしまう。道中は馬群にとりつくことに終始し、4角で15頭中14番手という絶望的なポジションで直線を迎えた。
それでも余力を残していたルージュスティリアは馬の間を縫って懸命に追い込むと、勝ち馬ナミュールと並ぶ上がり最速のタイムをマークしてフィニッシュしたのだ。
上位馬は軒並み先行馬か中団にいた馬だっただけに、元JRA騎手の安藤勝己氏も自身のTwitterで「これは走ってくるよ」と高く評価していた。
だが、オークス(G1)の出走権確保に向けて臨んだフローラS(G2)では1番人気に推されながら、まさかの最下位。序盤に行きたがってリズムを崩したことも響いたか、福永騎手も「脚がたまり切らなかった。もう一度やり直しだね」と落胆した。鞍上の見立て通り、随所で“G1級”と思えるほどのパフォーマンスを見せながらも、気性面の課題で力を発揮しきれないまま春シーズンは終了してしまった。
そこから5ヶ月空いた今回は、前走から20kgも馬体重が増えて身体の成長は見られたが、気性面の進歩はまだまだ必要だ。それでも未完成な状態で勝ちきることができたのは大きいだろう。
鞍上の福永騎手は「成長分もあると思うが、動きは重かった。バランス面もまだまだで、素質だけで勝った感じ」と、本馬が所属する東京サラブレッドクラブのHPを通してレースでの感触を伝えている。
藤原調教師も、余力を残した仕上げで勝ち切った点を評価したうえで、「求めるものが大きい馬」、「上を目指していく」と、今後に向けて力強いコメントを残している。
ルージュスティリアは“ニックス”(相性の良い配合)として有名な父ディープインパクト×母父Storm Catという血統だ。同じ組み合わせのG1馬8頭のうち、ラキシスなど6頭が古馬G1を制しており、これからの成長もまだまだ期待できそうだ。
福永騎手のコメントからも一度使った上積みは大きそうだが、無理をせずに今後は放牧へ出される模様。名手から「G1」というワードを引き出したほどの原石をじっくりと磨き上げ、有言実行が果たされる日を楽しみに待ちたい。