デアリングタクト「生みの親」も絶句……「松山君は後ろすぎた」オールカマー(G2)完敗で気になる次走は

デアリングタクト

 25日、中山競馬場ではオールカマー(G2)が行われ、惜敗が続いていたジェラルディーナが好位追走から直線鮮やかに抜け出して勝利。父モーリス、母ジェンティルドンナの「13冠ベビー」がついに重賞ウイナーの仲間入りを果たした。

 テン乗りで見事にジェラルディーナを勝利に導いた横山武史騎手は、これが今年の重賞2勝目。レース後の勝利騎手インタビューでは「理想的なポジションで競馬をすることができましたし、最後の伸びは、僕が思っている以上の良い伸びでした」とパートナーを称賛。「若い女の子ですし、まだまだ成長できる部分が沢山あると思います」と、更なるステップアップを誓った。

 そんな横山武騎手とは対照的に、ショックを隠せなかったのが松山弘平騎手だ。

 1番人気のデアリングタクト(牝5歳、栗東・杉山晴紀厩舎)とのコンビで、秋華賞(G1)以来の白星を狙ったが、終始外々を回らされるロスもあって6着に敗れた。

 レース後、松山騎手は「ポジションはあまり意識せずにリズム重視で乗りました」「最後は前を交わすのがやっとでした。これだけの人気馬で結果を出せず申し訳ありません」と声を絞り出した。

「終わってみれば、内枠の3頭で決まる極端な結果になりましたね。道中もインで脚を溜められたのが、好走につながったと思います。デアリングタクトを含めて上位人気に推された馬は外を回った分、直線伸びを欠きました。

デアリングタクトがスタートで行き脚がつかなかったのは想定内ですが、勝負所でも反応は今一つ。重賞未勝利だった勝ち馬と同じ54kgで見せ場なく掲示板を外したのは、今後に向けて少し気になるところです」(競馬誌ライター)

「生みの親」も絶句…

 三冠牝馬の思わぬ完敗にため息をついたファンも少なくなかっただろう。血統評論家で、デアリングタクトの“生みの親”でもある青木義明氏もそんな一人だった。

 青木氏はデアリングタクトを生産した長谷川牧場からの依頼を受けて、デアリングタクトの配合を考案。母デアリングバードの交配相手として、当時種牡馬1年目だったエピファネイアを推奨して、後の三冠牝馬を世に送り出した。

 かつて『競馬通信社』を運営していた青木氏。現在はTwitterやYouTubeなどを駆使して血統・配合論を交えながらファンに情報を発信している。

 オールカマーが行われたこの日もYouTubeでライブ配信を行い、“愛娘”デアリングタクトに自信の「◎」を打っていた。レース前、そしてスタート直後は饒舌にレースの状況を解説していた青木氏だったが、勝負所の3~4角で声のトーンが徐々に変化。最後の直線半ばで、デアリングタクトの敗戦を悟ると、「いやー……届かないな」としばらく言葉を失った。

 レース後には、勝ったジェラルディーナには「参りました」と頭を下げると再び数秒間の沈黙。「松山君は後ろすぎたよね」と、敗因の1つとして鞍上の位置取りに言及するのが精いっぱいだった。

 デアリングタクトが脚元の故障を乗り越えターフに戻ってきたのは今春だった。1年以上にわたって戦列を離れていたが、ヴィクトリアマイル(G1)で復帰。初戦は6着に敗れたが、続く宝塚記念で3着に入り、陣営はこの秋に完全復活を遂げるシナリオを描いていた。

 ところが、始動戦でまさかの6着。次走はエリザベス女王杯(G1)とジャパンC(G1)の両睨みだったが……。

「今日の競馬を見る限り、古馬になって不器用さが一段と増した印象です。内回りの阪神で行われるエリザベス女王杯より、大箱コースの東京2400mで行われるジャパンCの方がいいかもしれません。オークスを制覇し、アーモンドアイとコントレイルとも競い合った舞台ですしね。

もしエリザベス女王杯なら、その後は香港へ遠征も視野に入っているようです。ただ、陣営は来年の現役続行も宣言していますし、この秋は無理をさせず(オールカマーとジャパンCの)2戦だけでいいと思いますよ」(同)

 春はひと叩きされた効果で2戦目の宝塚記念は3着に入った。秋も春と同じ休み明け6着からの巻き返しはあるか。次走がどのレースになろうとも、故障明け4戦目は三冠牝馬の名に恥じない走りが求められる。

中川大河

競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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