ダノンの借りはダノンで返す! 戸崎圭太が払拭したいダノンキングリーの「悲劇」

ダノンザキッド 撮影:Ruriko.I

 9日、東京競馬場で毎日王冠(G2)が行われる。天皇賞・秋(G1)やマイルCS(G1)のステップとなる当レースには、今年も4頭のG1馬が参戦を予定している。

 人気の一角となりそうなのがレイパパレ(牝5歳、栗東・高野友和厩舎)だ。昨年の大阪杯(G1)で無敗のG1馬となった才女は、その後も牡馬に交じってG1戦線で好走してきた。

 前走のヴィクトリアマイル(G1)こそ、スタートで躓き、出負けした影響もあってか12着に敗れたが、明確な敗因があるだけに今回は巻き返す可能性も十分にあるだろう。

 レイパパレが主戦の川田将雅騎手と共に立て直しを図る一方で、同じく川田騎手とコンビを組んできたG1馬ダノンザキッド(牡4歳、栗東・安田隆行厩舎)は、毎日王冠出走にあたり、鞍上交替を余儀なくされることとなった。

 ダノンザキッドはデビュー2戦目以来、9戦続けて川田騎手が鞍上を務めてきた “お手馬”だ。それでもレイパパレとレースが被ったことに加え、マイル路線で同オーナーのダノンスコーピオンに騎乗する可能性も高く、この度の乗り替わりに至ったと考えられる。

 そんな川田騎手の“贅沢な選択”のおこぼれにあずかり、ダノンザキッドへの騎乗が決まったのが戸崎圭太騎手だ。

 そして、川田騎手と戸崎騎手の間には過去にダノックスの馬を巡って、とある因縁があった。

ダノンキングリー

 戸崎騎手とダノックスの所有馬といえば、ダノンキングリーとのコンビが印象的だろう。デビューからダノンキングリーの手綱を任された戸崎騎手は、3連勝で同馬をクラシックに導き、皐月賞(G1)3着、日本ダービー(G1)2着と、栄冠まであと一歩の成績を残した。

戸崎圭太騎手が払拭したいダノンキングリーの「悲劇」…

 3歳の秋初戦は古馬を撃破して毎日王冠を優勝。春には届かなかったG1へのリベンジに向けて気運は高まったが、マイルCS挑戦の直前に戸崎騎手は落馬負傷でまさかの戦線離脱となってしまう。

 これにより、パートナーを失ったダノンキングリーは、横山典弘騎手を新たに鞍上として迎えた。

 横山典騎手の騎乗で、ダノンキングリーは中山記念(G2)1着や、大阪杯3着といった成績を残している。決して悪い結果ではなかったが、戸崎騎手が半年以上の離脱から復帰すると、ダノンキングリーは再び彼の元に戻ってきたのだ。

「ずっと待ってもらって、またG1で声を掛けていただいた。凄く光栄で幸せです」

 パートナーとの再会を喜んだ戸崎騎手は、安田記念(G1)と天皇賞・秋でダノンキングリーに騎乗する。しかし、それぞれ7着と12着に終わり、その先に待っていたのは無情の乗り替わりだった。

 結果を残せなかった戸崎騎手に替わって新しくダノンキングリーを任されたのは、ダノックスの主戦騎手である川田騎手だ。初騎乗でいきなりG1の安田記念に臨むと8番人気の低評価を覆し、1着という“一発回答”を披露。萩原清調教師も「何よりジョッキーの好騎乗のおかげ」と、新パートナーのアシストを勝因に挙げた。

戸崎圭太騎手

 その結果を受けて戸崎騎手は『競馬ラボ』で連載中のインタビュー企画『週刊!戸崎圭太』内で「正直、悔しいですし情けないのが本音ですね……」と胸の内を明かしている。

 デビュー戦から騎乗し、何度も一緒にビッグレースへ挑んできたダノンキングリーの存在は、ケガで離脱していた際、辛いリハビリを頑張るモチベーションにもなっていたという。

 それだけ思い入れの強かった馬の力を一番引き出したのは初騎乗の川田騎手だったという皮肉な結末に、戸崎騎手は大きな屈辱を味わっただろう。

 結局、ダノンキングリーはその後も川田騎手とのコンビを継続し、そのまま引退。二度と戸崎騎手が騎乗することは叶わなかった。

 そうした因縁から1年以上の時を経て、今度は川田騎手のお手馬に戸崎騎手が騎乗することになった。川田騎手が降板したわけではないため、キングリーの時とは状況が異なるものの、戸崎騎手にとっては自身の力を示す絶好の機会だ。

 また、ダノンザキッドは2年前のホープフルS以来勝ちから遠ざかっており、同馬を管理する安田隆行調教師も「(戸崎騎手が)違った良さを引き出してくれないか」と乗り替わりによりもたらされる化学反応に期待を寄せた。

 ダノンキングリーの降板で味わった屈辱を晴らし、ダノンザキッドと新たな関係を築くためにも、今回のレースは重要な一戦だ。

 千載一遇のチャンスに今度は戸崎騎手が“一発回答”できるか注目したい。

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