エイシンフラッシュ譲りの「上がり33.2秒」にシャフリヤール、イクイノックスらも戦々恐々!? 遅咲きの超新星が天皇賞・秋(G1)の惑星に

松山弘平騎手 撮影:Ruriko.I

 10日、阪神競馬場で開催された京都大賞典(G2、芝2400m)は、2番人気のヴェラアズール(牡5歳、栗東・渡辺薫彦厩舎)が、1番人気だった2着ボッケリーニに2馬身半差をつけて勝利。5歳秋に重賞初挑戦を迎えた新星が、秋のG1戦線に大きく名乗りを上げた。

「強い競馬でした。追って反応が良く、しっかりと最後も伸びて、いいレースだったと思います」

 レース後、そう勝ち馬を絶賛した松山弘平騎手は、前日の毎日王冠(G2、サリオス)に続く2日連続の重賞制覇。今週末から始まる連続G1開催に向けて、また1頭強力なパートナーを手に入れた印象だ。

「前半の1200mが1分13秒5というスローペースからの瞬発力勝負になりましたが、上がり3ハロン33.2秒ですか……最後はお父さんのエイシンフラッシュを彷彿とさせるような末脚のキレでしたね。非常に強い勝ち方でした。

芝に転向後は、すべて上がり最速。折り合いの心配もなさそうですし、秋のG1戦線に向けて楽しみな馬が出てきた印象です」(競馬記者)

遅咲きの超新星が天皇賞・秋の惑星に

 記者がそう評価するように、ヴェラアズールはこれで5戦連続の上がり最速。今年3月までは2勝クラスだったが、一気に重賞ウイナーの仲間入りを果たすこととなった。

 これだけを見ると、如何にも「若き新星の出現」といった感じだが、ヴェラアズールはすでに5歳秋を迎えている古馬。キャリアもこれが21戦目である。実は、今年の1月までずっとダートを走り続けており、芝は今回が5戦目だった。

「ヴェラアズールは父が日本ダービー(G1)を勝ったエイシンフラッシュで、母の姉妹にトールポピー(オークス)、アヴェンチュラ(秋華賞)がいるなど、血統だけ見ればクラシックなど芝の王道路線を歩んでいてもおかしくない馬です。

しかし、レース後に渡辺調教師も『デビューも遅くて、体質も弱かった』とおっしゃっていましたが、入厩前に故障してしまい、デビューは3歳の3月。その後も脚元を気遣って、今年までずっとダートで使われてきました」(同)

 一般的に芝よりもダートの方が脚への負担が軽いと言われており、ヴェラアズールに限らず、適性よりも脚元の関係でダートを使われている馬は少なくない。

 記者曰く「グンと良くなった」(渡辺調教師)ので今年から芝挑戦を始め、わずか半年程度で重賞制覇を成し遂げたわけだが、ここまで出世が遅れてしまったのは陣営としても随分歯がゆい思いをしていたはずだ。

 ただ、今回の勝利にかつて一世を風靡した「あの馬」の存在を思い出した競馬ファンもいたようだ。

武豊騎手

「次は、川崎でアウォ(会おう)ーディー」

 2016年、当時のダート界に1頭の新星が現れた。ダート転向後、無敗の快進撃を続けたアウォーディーである。

 上記は9月の日本テレビ盃(G2)で5連勝を達成した際に、主戦の武豊騎手から炸裂したオヤジギャグ(次走のJBC開催が持ち回り制なので、次は川崎ということを宣伝したい武豊騎手のサービス精神もあった)だが、今になっても一部の競馬ファンがつい口走ってしまうほどの“伝説”になっている。

 結局、その後アウォーディーはJBCクラシック(G1)で連勝を6に伸ばし、ダート界の頂点へ。デビューからずっと芝を走ってすでに5歳、キャリア32戦目の初G1という遅すぎた出世だった。

「芝→ダート」のアウォーディーと比べて、「ダート→芝」というヴェラアズールは真逆の道を歩む存在だが、5歳の路線転向をきっかけに“大変身”したという点では共通するものがある。

「いいレースだったと思います。これから先が楽しみです」

 レース後、松山騎手からそう期待を懸けられたヴェラアズール。今回が重賞初制覇とG1出走には賞金面でやや不安があるものの、京都大賞典1着馬には天皇賞・秋(G1)への優先出走権が与えられる。

 今年はシャフリヤール、ジャックドールら4歳勢に、ジオグリフ、イクイノックスといった3歳トップホースが挑む構図の天皇賞・秋だが、そこに遅れてきた5歳馬が割って入るのか。

「次は、東京でアウォーディー」となれば、ますます盛り上がりそうだ。

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