ステイゴールド重なるウインマリリンの勝利、現役続行の女王と5度目の対決あるか
11日、香港のシャティンで開催された香港国際競走。ヴァーズ、マイル、スプリント、カップといった4つのG1レースの最初に勝利を飾ったのはウインマリリン(牝5、美浦・手塚貴久厩舎)だった。
芝2400mで争われたレースで好スタートを決めたウインマリリンは、そのまま先頭に立ちそうな行きっぷりだったが、D.レーン騎手はパートナーのリズムを守り続けた。そうこうしている内にライバル各馬が次々と交わしていき、気が付けば9頭立てのレースで後方2番手までズルズルと後退していた。位置取りだけを見れば、折角取った好位のポジションを無駄にしているかのように映っても仕方がなかっただろう。
だが、決して無為無策ではなかったことを、最後の直線で披露した目の覚める豪脚が証明する。一時は最後方近くまで下がったウインマリリンだが大外に持ち出されると、これまでとは別馬のようなトップギアで加速。瞬く間にライバルを交わし去ってゴールしてしまったのだ。
「気分良くリラックスして走っていました。彼女の末脚が切れるのは知っていましたし、それを生かす乗り方をしようと思いました」
レースをそう振り返ったレーン騎手だが、初騎乗となったエリザベス女王杯(G1)でウインマリリンを既に手の内に入れていたことも、大一番での脚質転換へと繋がったか。これには管理馬を送り出した手塚調教師も「作戦通りではなかった」と認めつつ、新たな引出しを見つけてくれたレーン騎手に対し「神騎乗」と大絶賛。9度目の挑戦で手に入れた初のG1タイトルを喜んだ。
通算20回目の挑戦で悲願のG1制覇を達成したステイゴールドと比べれば半数にも満たないが、キャリア晩年の香港で大願成就した姿は重なるところもある。
デビュー当時から素質を高く評価されていたウインマリリンだが、同世代には史上初となる無敗の牝馬三冠を成し遂げたデアリングタクトという絶対女王が君臨。古馬となった翌年に日経賞(G2)やオールカマー(G2)を制したものの、自身の体質の弱さもあってG1の壁を超えられずにいた。
しかし、今年の夏に札幌記念(G2)で3着に入ると状態は急上昇。エリザベス女王杯を前に陣営が「中間は攻め切れましたし、気持ちも乗っています。昨年とは状態が違いますよ」とコメントしたほどだった。ジェラルディーナの強襲に屈したものの、ライラックと同着の2着に好走したことで、陣営の自信は確信へと変わっただろう。
現役続行の女王と5度目の対決あるか
その一方で、5歳牝馬のウインマリリンにはクラブの規定による6歳春に引退という二文字も無関係ではない。時期的に3月下旬のドバイシーマクラシック(G1)やドバイターフ(G1)あたりが次走の候補となりそうだ。
もし、ドバイのG1にウインマリリンが出走するようなら、デアリングタクトとの対決も視野に入ってくる。同馬はジャパンC(G1)で4着に敗れはしたが、復調気配が感じられたことで、陣営から6歳になっても現役続行を決断した経緯がある。
となれば、同じ岡田ファミリー系列であるウインレーシングの所有馬ウインマリリンも結果次第で現役を続行する可能性もゼロではないだろう。ドバイの地で2頭による5度目の直接対決が実現することを楽しみに待ちたい。