武豊「空気を読まない」刺客に不覚から7年…朝日杯FSで警戒すべき高配当の使者

武豊騎手 撮影:Ruriko.I

 18日、阪神競馬場で行われる朝日杯フューチュリティS(G1)に17頭の精鋭がエントリー。近年の当レースは芝1600m条件のレースということもあり、芝2000mのホープフルS(G1)に比べるとクラシックに直結するケースは珍しかった。

 だが、昨年はイメージを大きく覆すハイレベルなメンバーが集結していた。優勝馬のドウデュースは武豊騎手に初めて朝日杯優勝をもたらしただけでなく、翌春の日本ダービー(G1)をも勝利。2着セリフォスはマイルCS(G1)、3着ダノンスコーピオンはNHKマイルC(G1)、5着ジオグリフは皐月賞(G1)を制した。

 どちらかというと早熟な短距離馬が活躍する朝日杯FSから、既にG1馬が4頭も誕生していることは、近年稀に見る大豊作といっていいだろう。

 長らく勝てなかった朝日杯を優勝した武豊騎手はJRA・G1全制覇も視野に入るが、7年前にも確勝級の期待馬で挑みながら2着に惜敗した苦い記憶もある。それは単勝オッズ1.5倍の大本命に支持されたエアスピネルとコンビを組んだ2015年の朝日杯FSだ。

 デビュー戦、2戦目のデイリー杯2歳S(G2)を楽勝した無敗馬だった上、本馬の母エアメサイアは現役時代に武豊騎手と秋華賞(G1)を制した元パートナー。2連勝の内容についても「ほぼ完璧なレース」と評していた逸材でもあった。当時からすでに朝日杯は武豊騎手が勝っていない数少ないG1の1つだったが「今度こそ」という想いは、本人だけでなく、多くのファンにとっても同じだったのではないだろうか。

 しかし、何が起きても不思議ではないのもまた競馬である。

「空気を読まない」刺客に不覚…

 16頭立てで行われた芝1600m戦。無難にスタートを決めた武豊騎手とエアスピネルのコンビは、先行勢を射程圏に入れた好位の8番手を追走する。そのまま道中を抜群の手応えで進むと後は力で押し切るだけ。最後の直線で6番手までポジションを上げ、直線半ばで敢然と先頭に立った。

 懸命に鞭を入れられる他馬の状況からも、ついに悲願達成かと思われたその時、ほぼ最後方にいたはずの馬が1頭だけ異次元の脚で追い上げてきたのだ。その相手こそ母エアメサイアがオークス(G1)で敗れたシーザリオの仔リオンディーズ。ゴール前でエアスピネルに並び掛けると、一瞬にして抜き去ってしまった。

「いい競馬ができました。3戦目で一番いい走りができました。しかし、勝った馬が強過ぎました。今日は完敗です」

 敗戦をそう振り返った武豊騎手も認めざるを得ないほど、リオンディーズの末脚は凄まじかったのだから……。エアスピネルの脚色に衰えはなく、ただただ相手が悪かったというより仕方がない。それを証明するかの如く、2着に敗れたとはいえ、エアスピネルと3着馬の間には決定的ともいえる4馬身もの差がついていた。

 数日後にゲスト参加したボートレースのトークライブで「本当は勝ってここに来られれば良かったけど、空気の読めないイタリア人がいたもんで……」と、リオンディーズに騎乗していたM.デムーロ騎手に対して恨み節と思えるジョークを披露して会場に訪れたファンの笑いを誘ったエピソードも有名だ。

 今年はフロムダスクとのコンビで朝日杯FSに挑む武豊騎手は、自身のオフィシャルサイトで「伏兵の評価でしょうが、狙って乗るつもりです」と昨年に続いての連覇に意欲を見せたが、新馬勝ちから2戦目でこの舞台に駒を進めた素質馬2頭の存在は気になっているかもしれない。

 朝日杯FSをデビュー2戦目で優勝したケースは、リオンディーズが初となった。そして2例目に挑戦するのが、エンファサイズ(牡2、栗東・四位洋文厩舎)とレイベリング(牡2、美浦・鹿戸雄一厩舎)の2頭。いずれもデビュー戦を好タイム、上がり3ハロン最速の脚で楽勝した素質馬だけに警戒すべき強敵となりそうだ。

黒井零

1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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