「格差11倍」からトドメの2億円増! 優勝しても賞金はライバルの5着以下、フェブラリーS(G1)が存亡の危機
19日、東京競馬場でダートのマイル王決定戦フェブラリーS(G1)が開催。今年最初のG1レースということもあって、注目の集まるレースであることに変わりはないのだが、もうひとつ盛り上がりを欠く印象は拭えない。
というのも、一昨年と昨年にこのレースを連覇したカフェファラオが回避しただけでなく、新星登場の期待を背負ったギルデッドミラーも右前第1指骨剥離骨折が判明して引退、繁殖入りということで出走がなくなったからである。
その結果、前哨戦の根岸S(G3)を制したレモンポップに人気が集中しそうだが、不安のある1ハロンの距離延長や疲れを理由に出否が流動的だった馬の参戦は、本番で逆転濃厚と見られていたギルデッドミラーの回避と無関係ではなさそうだ。
レモンポップの主戦として「8戦7勝2着1回」とほぼ完璧な結果を残していた戸崎圭太騎手から、坂井瑠星騎手へ乗り替わったことも、当初の予定が変更されたのではないかと勘繰りたくなる参戦である。
ただ、主役不在といわれるこの混戦は、何も今になって始まった訳でもない。
近年も上位人気の勝利で収まっているものの、2着馬や3着馬は人気薄の伏兵が食い込んでいるように、全体的には波乱含みの傾向が見え隠れする。同じダートのG1だからといって、中距離のチャンピオンズC(G1)を優勝した馬が積極的に参戦しない背景には、芝スタートでマイル戦という条件もあるのだろう。
そして、こうした傾向を決定づけたと考えられるのが、2020年に創設されたサウジC(G1)の存在だ。
「格差11倍」からトドメの2億円増!
サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場で開催されるこのレースは、チャンピオンズCと同じダート1800mという条件に加えて、世界最高賞金のレースとしても有名だ。1着賞金1000万米ドルは、2020年当時の日本円換算で約11億円。円安の進んだ今年はさらに高騰して約13億円ともいわれる。
対するフェブラリーSの賞金は、1着賞金1億2000万円でしかない。それも昨年から2000万円増額された上での金額だ。これで少しでも注目度が上がればよかったのだろうが、相場の関係があったとはいえ、何もしなくても「約2億円」も増えたライバルと比べるまでもない絶望的な賞金差といえる。
ちなみにサウジカップ5着の賞金約1億3000万円は、フェブラリーSの1着賞金1億2000万円を上回るのだから、ただでさえ連覇したカフェファラオの陣営が3連覇に興味を示さなかったことにも納得がいく。
「当初、福永祐一騎手が最後のG1ということで出走を予定していたカフェファラオでしたが、結局サウジCに予定を変更しましたし、昨年のチャンピオンズCを優勝したジュンライトボルトも同じくサウジCを選択しています。一昨年のチャンピオンズC優勝馬テーオーケインズもドバイワールドCに出走予定と、トップクラスの多くが高額賞金の海外G1に流れてしまいました。
昨年の皐月賞馬ジオグリフの陣営も「サウジCに招待されなかったら参戦する」と発表していたように、フェブラリーSがG1レースであるにもかかわらず、もはや完全に格下の扱いになっています。賞金上位馬が続々と回避を表明したため出走ボーダーが下がり、出走が難しいと見られていたアドマイヤルプスは急遽、牧場から戻したそうです」(競馬記者)
関係者によると、それ以外にもサウジに遠征する魅力があるという。サウジカップデーに行われる競走は、主催者が所属外の競走馬を招待し、出走費用や滞在費用を負担する「招待レース」なのだ。出走馬に関係するスタッフの招待も、昨年までの1人から今年は2人に増え、同行する調教師もビジネスクラスの飛行機を用意してもらえるなど、全てにおいて手厚い待遇だから驚きだ。
だが主催者のJRAとしては、フェブラリーSの危機的状況に指を咥えて見過ごしてはいられないはずだ。賞金増額前から約11倍の格差を見せつけられ、もはやフェブラリーSを軽視してサウジからドバイという流れも日本の関係者に定着しつつある。地方との連携強化やダート番組の拡充などが発表されて間もないが、ここまでくるとJRAで唯一行われるダートのマイルG1の存在意義を問われるどころか、存亡の危機といえるかもしれない。
圧倒的な劣勢に立たされる2月という施行時期の見直しも急務であり、「フェブラリーS」という名称変更も視野に入れる必要を迫られるのではないか。
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