川田将雅「苦手の長距離」で連敗ストップならず! 陣営は「レース運びは完璧」と好感触も…阪神大賞典(G2)吉田隼人、福永祐一と何が違ったのか
19日に阪神競馬場で開催された阪神大賞典(G2)は、C.ルメール騎手の2番人気ジャスティンパレスが優勝。昨秋の神戸新聞杯(G2)以来となる2つ目の重賞タイトルを手に入れるとともに、天皇賞・春(G1)の有力候補として名乗りを上げた。
「今日は3000mでしたが、前走と前々走でスタミナを見せてくれましたので自信がありました。スローペースでしたがメンタルも成長していたので、乗りやすく最後スペースができた時はいい反応をしてくれました。今日はG2でしたがトップレベルになれる馬です」
レース後には、今回が初コンビとなったルメール騎手からパートナーを称賛するコメント。数多くの名馬を知る名手から、トップレベルになれるという言葉が出たように、G1を勝てるだけの資質があると感じているようだ。
陣営は「レース運びは完璧」と好感触も…
これに対し、単勝1.6倍の断然人気に支持されたボルドグフーシュ(牡4、栗東・宮本博厩舎)は、最後の直線を外から伸びたが2着まで。相手に勝負どころで前が詰まる痛恨の不利があった上に、1馬身3/4差をつけられては完敗というしかない。
敗れはしたものの、川田将雅騎手から「とてもいい内容で走れましたし、いい前哨戦になったと思います」、管理する宮本博調教師も「レース運びは完璧」と前向きなコメントも出た。それぞれ思うところはあったかもしれないが、前哨戦という意味では本番で巻き返しを期待できる内容だったということだろう。
一方で、戦前から注目を集めていたのは、これが初コンビだった川田騎手の「長距離苦手説」だ。2010年の菊花賞(G1)をビッグウィークで制した過去はあるのだが、その後は長距離重賞で連戦連敗。現時点で13年間も勝利から見放されている。2着や3着には来ているため、単なる偶然という見方も可能だが、上位人気馬に騎乗していることを考えると、それほど得意な条件ではないともいえそうだ。
とはいえ、先週の川田騎手が破竹の快進撃を見せていたことは間違いない。
12日の金鯱賞(G2)をプログノーシスで制しただけでなく、14日の黒船賞(G3)をシャマル、15日のダイオライト記念(G2)をグロリアムンディ、16日の名古屋大賞典(G3)をハギノアレグリアスで連勝。土曜阪神こそ重賞の騎乗はなかったが、メインレースの若葉S(L)をしっかりと勝利した。そこへきて阪神大賞典には、昨年の有馬記念(G1)で2着のボルドグフーシュがスタンバイしていたのだから、川田人気に拍車が掛かったのは当然だったかもしれない。
ただ、単勝1.6倍のボルドグフーシュと3.1倍のジャスティンパレスの間に、数字が示すほどの実力差があったのかとなると、これにはいささか疑問が残る。両馬が初めて激突した神戸新聞杯でジャスティンパレスは、ボルドグフーシュ相手に4馬身差をつける楽勝をしていた相手なのだ。その後の菊花賞(G1)、有馬記念(G1)でボルドグフーシュが先着したため、勝負付けが済んだと見るファンが多かったのかもしれない。
だが、ジャスティンパレスの敗戦には、情状酌量の余地が残されていたことにも触れておきたい。
菊花賞は早め先頭から押し切ったアスクビクターモアがレコード勝ちしたように、先行勢にとって厳しい流れ。好位からこれを追い掛けたジャスティンパレスの脚が鈍ったところを、後方からマクったボルドグフーシュが交わして1/2馬身先着していた。
有馬記念についても、ジャスティンパレスに騎乗したT.マーカンド騎手が手綱をしごいて前につけている。出入りの激しいレース展開を後方からマクったボルドグフーシュが2着。出遅れて最後方近くを走っていたジェラルディーナが3着に入ったことからも、先行勢にとって厳しいレースだったといえる。
これらを踏まえた上で阪神大賞典のボルドグフーシュを見てみると、近2走より積極的な位置取りで最終コーナーは2番手の外。2走前の吉田隼人騎手や前走の福永祐一騎手に比べた場合、一発を狙う乗り方よりも受けて立つイメージに近いポジション取りだった。
近2走と異なったのは、ルメール騎手の騎乗したライバルもまた、ほぼ完璧に近いレースをしていたことではないか。
超スローペースを内で我慢したことにより、脚も十分に溜まり、前が空けばいつでもスパート可能な状況。直線の勝負どころでアフリカンゴールドが壁になる痛恨の不利を受けたが、そこから立て直すと出色の脚色で突き抜けてしまった。
こういった“綺麗な乗り方”こそルメール騎手の真骨頂といえる。結論から言ってしまえば、不完全燃焼に終わっていた馬がルメール騎手を得たことで本来の能力を発揮できたということになる。
また、馬体重の面で2頭に差があったことも注目しておきたい。敗れたボルドグフーシュの2キロ増に対し、ジャスティンパレスは16キロ増とパワーアップ。21年の9月にデビューした当時、444キロに過ぎなかった馬が28キロ増えているのだ。
近年、古馬になって飛躍したリスグラシュー、クロノジェネシス、ラッキーライラック、グランアレグリアらは、デビュー時の体重から大幅増で本格化を遂げた。阪神大賞典のパドックをチェックしてもジャスティンパレスに太目感はなく、成長分と見てよさそうだった。今回の圧勝劇に繋がった馬体増といえるかもしれない。
今回の敗戦でいつもの後方待機に戻してきそうなボルドグフーシュだが、本番で再び逆転するためには、川田騎手の騎乗にも何かしらの工夫が求められるのではないか。
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